夜になっても眠れない。朝になっても起きられない。〜睡眠リズム障害かもしれません〜

「夜になっても目が冴えて眠れません」「深夜3時くらいにならないと眠れません」「明け方になってようやく眠くなります」「朝は全然起きられません。寝坊ばかりしてしまいます」

睡眠クリニックには、このような相談がしばしば寄せられます。

このような問題でお困りの方、もしかしたら、「睡眠リズム障害」(概日リズム睡眠・覚醒障害:CRSWD)かもしれません。

睡眠リズム障害というのは文字通り、睡眠のリズムが崩れてしまい、あるいは学校や仕事などの時間帯と体のリズムがずれてしまい、本来眠るべき時間に眠れず、起きるべき時間に起きられない状態のこと。実は非常に多い疾患として知られています。

典型的なのは、上で書いた訴えのように深夜や朝方まで眠れず(そしてその時間まではなかなか眠くならず)、逆に昼くらいにならないとなかなか起きられない、というものです。

この状態は、いわば「時差ボケ」に近いと言えます。

どの年代でも発症しうるのですが、特に思春期〜若年者の方に多いです。

中高生のお子さんがどうしても朝起きられず、学校は毎日遅刻。試験や体育祭など大事な日にすら学校に行けず、困って親御さんといっしょに来院。そんなケースもしばしばです。

また、仕事・試験・課題などで徹夜したことを契機としてリズムが崩れそのまま戻らないという場合もあります。

このようなリズムの問題による睡眠の問題の場合、一般的な睡眠薬が効きにくいことが知られています。1

では、どのように治療していけばよいのでしょうか。

まずはじめに実施すべきなのは、眠るための環境(睡眠衛生)を整えてあげることです。

その中でもとりわけ大切なのが、「光」に正しく向き合うこと。

朝起きたときにはしっかりと朝日を浴びる。夜は部屋の明かりを絞る。夕方以降は、間接照明など、柔らかい明るさの環境で過ごすことが推奨されます。強い個人差がありますが、夜にある程度の明るさが存在してしまうと、体は「まだ夜が来ていない」と認識してしまい、リズムが遅れ、なかなか眠れない原因となります。2

また、近年は特にスマートフォンなどのディスプレイの光が問題になっています。夜間にやむを得ず使う場合にはバックライトの光量を落とす、iPhoneであれば「ナイトシフト」モードをオンにするなどの対策が不可欠でしょう。

ここでは光についてのみご紹介しましたが、これ以外にも日常生活の中で様々なことを改善することで、リズムの調整に役立てることができます。

ただ、眠るための環境を整えることは時間がかかり、また職場・学校・家庭の事情からしっかりとした対策をすることが困難な場合がしばしばです。

そのような場合、薬物治療が有効な場合があります。

上述のように一般的な睡眠薬が効きにくいと言われるリズム障害。そこで、「メラトニン」というホルモンを利用する治療が考えられます。メラトニンは普段、夜に脳内で分泌されているホルモンで、「いまは夜ですよ」と体に教えてあげる役割を果たしています。

したがって、このホルモンを毎日決まった時間に体が受け取ることができれば、体は「あ、もう夜なんだ」と気付けるようになり、自然な眠りを促すことができると考えられています。

そして、このホルモンと同じように振る舞う薬があるのです(健康保険が使えます)。この薬は、メラトニンという本来人間の脳内にあるホルモンを利用するという点で、いわゆる睡眠薬とは機序が全く異なるものです。

この薬を飲むことで、毎日決まった時間に自然な形で眠りに落ちることが期待されます。

ただ、飲む時間をずらしてしまうと、体がメラトニンに反応するタイミングがずれ、人為的に時差ボケをつくってしまう恐れがあります。

適切にフォローされることが必要であるため、治療を希望される場合は睡眠を専門に扱う医療機関を受診されることをおすすめ致します。

当院では、睡眠リズム障害に対する時間薬理学的治療を含め、眠りの問題に悩まれている方を幅広く受け入れている保険医療機関です。

お困りの方はお気軽にご来院下さい。

引用文献

1. Shimura A et al. Later sleep schedule and depressive symptoms are associated with usage of multiple kinds of hypnotics. Sleep Med. 2016 Sep;25:56-62.

2. Phillips AJK et al. High sensitivity and interindividual variability in the response of the human circadian system to evening light. Proc Natl Acad Sci U S A. 2019 Jun 11;116(24):12019-12024.