自閉スペクトラム症(ASD)と睡眠障害

みなさん、こんにちは。睡眠プライマリケアクリニックです。
ところで、みなさんは自閉スペクトラム症(ASD: Autism Spectrum Disorder)という言葉を聞いたことがありますか?実は、ASDの方々は、睡眠に関する悩みを抱えていることが多いのです。今回は、ASDと睡眠の関係、そしてより良い睡眠を得るためのヒントをご紹介します。

 

自閉症スペクトラム症(ASD)って何?

自閉症スペクトラム症(ASD)は、人とのコミュニケーションや社会性に難しさを感じたり、特定の物事に強い興味を持ったりする特徴がある、発達障害の一つです。ASDの方は、日常生活のさまざまな場面で独特の困難を経験することがあり、その中でも睡眠障害は特に多く見られることが知られています[1]。

 

ASDの方によく見られる睡眠の悩み

ASDの方々には、次のような睡眠の悩みが多いということが分かっています。

  1. なかなか寝付けない
    ベッドに入ってもすぐに眠れず、寝るまでに時間がかかってしまう(例:1時間以上かかる等)[1]。
  2. 夜中に何度も目が覚めてしまう
    一度寝ても、夜中に何回も目が覚めてしまい、そのあとなかなか眠れなくなります(例:途中で目が覚めるだけでなく、目が覚めた後30分以上寝付くのが難しい等)[1]。
  3. 生活リズムが乱れやすい
    朝起きるのが遅くなったり、夜更かしが続いたりして、規則正しい睡眠が取りにくくなります(例:夜型の生活が続く・自然と生活していると睡眠リズムが固定されない等)[1]。
    参考記事:夜になっても眠れない。朝になっても起きられない。〜睡眠リズム障害かもしれません〜
  4. 睡眠中に変わった行動が起きる(睡眠時随伴症)
    夜中に歩き回ったり、急に叫んだり、手足が動いたりすることがあります[2]。
    参考記事:睡眠時随伴症(睡眠時のねぼけ行動)について

これらの睡眠の問題は、日中の生活や体調にも大きく影響してしまうことがあります。

 

ASDの方の睡眠を改善するためのヒント

では、どうすればASDの方の睡眠を良くすることができるでしょうか?以下にいくつかの方法をご紹介します:

  1. 睡眠の習慣づくり
  2. 寝室環境の整備
    • 日中はなるべく明るい光を浴び、夜は部屋を暗くすることで、体内時計を整えます[1]。
    • 寝室は静かで快適な温度に保ちましょう。
  3. 栄養バランスの良い食事
  4. ASDに伴う睡眠障害の症状がひどい場合には薬の使用も検討可能
    • 睡眠障害が深刻な場合、医師が薬を処方することがあります(症状に応じて、メラトニン受容体作動薬、手足の動きを抑える薬剤、セロトニンやドーパミンに働きかける薬が効果があることが知られています。どのような薬が効果があるかは医師の診察・判断が必要です)。
    • ただし、睡眠薬として有名なベンゾジアゼピン系の薬剤は、ASDの方には効果がない・副作用が出やすいことが知られているので、日本・海外ともに使用は避けられる傾向にあります[2]。

  

 

まとめ

ASDの方の睡眠の悩みは、日々の生活に大きく影響する重要な問題です。ここで紹介した方法を試してみることで、睡眠の質が良くなり、毎日が快適に過ごせるようになるかもしれません。一人ひとりに合った方法を見つけることが大切です。当院の記事が皆さまの睡眠改善の一助となることを願っております。

参考文献
[1] Mazzone, L., et al. (2018). Sleep problems in children with autism spectrum disorder. Pediatric Research, 84, 227-234.
[2] Devnani, P. A., & Hegde, A. U. (2015). Autism and sleep disorders. Journal of Pediatric Neurosciences, 10(4), 304-307.
[3] Yavuz-Kodat, E., et al. (2020). Sleep endophenotypes of autism: A systematic review and meta-analysis of polysomnography-based studies. Sleep Medicine Reviews, 51, 101278.