スマホと睡眠 〜見る時間だけでなく、姿勢や距離も重要〜

こんにちは。睡眠プライマリケアクリニック池袋です。

 9月も終わり、本格的な秋に入ろうというこの頃、夜長をいかがお過ごしでしょうか。入眠時のお供に、スマートホン(スマホ)を見るという方もいらっしゃると思います。しかし、夜間にスマホを見ることは、以前のコラム「「不眠」ってなんだろう」や「「昼間眠くて仕方がない」時に睡眠の医師が考えること(2)」、「夜になっても眠れない。朝になっても起きられない。〜リズム障害かもしれません〜」でもお話ししたように睡眠に様々な悪影響があることが分かってきています[1-5]。また、夜間の光の曝露は、体重や糖尿病などの代謝疾患の指標の増加とも関連していることが近年注目されてきており[6]、夜間のスマホの光もその悪影響がある可能性が報告されています[7]。夜間のスマートフォンの光による悪影響を減らすためには、どんなことができるでしょうか?

 夜間にスマホを見ることによる睡眠への悪影響を低減させるためには、当たり前に聞こえるかもしれませんが、そもそも夜間にスマホを見ないことが最も効果的であると、研究でも確かめられています[3, 4]。次善の策として、光の中でも睡眠への悪影響が最も強いことが知られているブルーライトへの曝露を抑制すること(例えば、ブルーライトの発生を抑制する画面フィルムやiPhoneなどのNight Shiftモード、サングラスやブルーライトをカットする眼鏡の使用など)が挙げられます[1, 4]。また、スマホを見る姿勢やスマホの視距離についての報告もあります。夜間にスマホを見る際に、寝ている姿勢だと睡眠に悪影響があり、また、寝ている姿勢では座っている姿勢に比べてスマホの視距離が短くなってしまいます。寝ている姿勢ではスマホの視距離が短いほど睡眠に悪影響があったことが報告されています[2, 8]。これは、スマホの視距離が短いほど、目にとっての照度が強くなるためだと考えられています(図1)[8]。そのため、夜間にスマホを見る際には、寝ながらではなく座って、またスマホの視距離を長くとることも、一助になるかもしれません。

当院では、個別の状況・事情に応じて、アドバイスや治療を提供しております。不眠や睡眠障害でお困りの方は、お気軽にご来院ください。

<参考文献>

  1. Heo JY, Kim K, Fava M, Mischoulon D, Papakostas GI, Kim MJ, Kim DJ, Chang KJ, Oh Y, Yu BH, Jeon HJ. Effects of smartphone use with and without blue light at night in healthy adults: A randomized, double-blind, cross-over, placebo-controlled comparison. J Psychiatr Res. 2017 Apr;87:61-70.
  2. Krishnan B, Sanjeev RK, Latti RG. Quality of Sleep Among Bedtime Smartphone Users. Int J Prev Med. 2020 Aug 6;11:114.
  3.  Duraccio KM, Zaugg KK, Blackburn RC, Jensen CD. Does iPhone night shift mitigate negative effects of smartphone use on sleep outcomes in emerging adults? Sleep Health. 2021 Aug;7(4):478-484.
  4. Schmid SR, Höhn C, Bothe K, Plamberger CP, Angerer M, Pletzer B, Hoedlmoser K. How Smart Is It to Go to Bed with the Phone? The Impact of Short-Wavelength Light and Affective States on Sleep and Circadian Rhythms. Clocks Sleep. 2021 Oct 28;3(4):558-580.
  5. Dissing AS, Andersen TO, Nørup LN, Clark A, Nejsum M, Rod NH. Daytime and nighttime smartphone use: A study of associations between multidimensional smartphone behaviours and sleep among 24,856 Danish adults. J Sleep Res. 2021 Dec;30(6):e13356.
  6. Fleury G, Masís-Vargas A, Kalsbeek A. Metabolic Implications of Exposure to Light at Night: Lessons from Animal and Human Studies. Obesity (Silver Spring). 2020 Jul;28 Suppl 1(Suppl 1):S18-S28.
  7. Nagai N, Ayaki M, Yanagawa T, Hattori A, Negishi K, Mori T, Nakamura TJ, Tsubota K. Suppression of Blue Light at Night Ameliorates Metabolic Abnormalities by Controlling Circadian Rhythms. Invest Ophthalmol Vis Sci. 2019 Sep 3;60(12):3786-3793.
  8. Yoshimura M, Kitazawa M, Maeda Y, Mimura M, Tsubota K, Kishimoto T. Smartphone viewing distance and sleep: an experimental study utilizing motion capture technology. Nat Sci Sleep. 2017 Mar 8;9:59-65.