市販睡眠薬(抗ヒスタミン薬)使用の問題

こんにちは。睡眠プライマリケアクリニック池袋です。

外来で診察をしていると、眠りに困って、ドラッグストアなどで売られている市販のお薬を飲まれる方がいらっしゃいます。

その中に商品名”ドリエル”、”リポスミン”、”ビタトレール”、”睡眠改善薬”などの名称で売られている、市販薬があります。これらは”ジフェンヒドラミン塩酸塩”と呼ばれる、抗ヒスタミン薬と呼ばれる成分が主成分となった薬です。

花粉症の薬を飲むと急激な眠気が来ることがあると思いますが、それと同様の作用を利用して、抗ヒスタミン薬は眠りを作ります。

一方で、これらの薬を使って眠りを作るデメリットは数多くあり、睡眠を専門にする医師は、市販の抗ヒスタミン薬の利用を推奨しないことが多いです。

①抗ヒスタミン薬は朝起きたあとの持ち越しが多い(carry overがある)[1]

抗ヒスタミン薬は睡眠薬に比べて、副作用が強いという問題があります。具体的には、翌日の眠気、覚醒度の低下、ワーキングメモリの低下が、”処方される睡眠薬”と比べても多いことが知られています。副作用の観点でも、余りメリットがないのです。

②依存・耐性を引き起こす

抗ヒスタミン薬の眠気の作用には依存や耐性が起きることが知られています。内服を長期で続けていると、薬がないと眠れなくなったり、徐々に薬が効かなくなったりします。

実際にいくつかのレビューでは、内服中止後の不眠(反跳性不眠)や、長期の内服での効果の減退・認知症増加のリスクがあることが報告されています[2,3]

上記の理由から当院では患者さんに市販薬(特に抗ヒスタミン薬)の利用をお勧めしておりません。

医療用医薬品では、長期的な依存・耐性のリスクが低く、翌日のcarry overの少ない薬も開発されており、薬を使って不眠の症状をコントロールしたい場合は、そのような薬を利用することが重要と考えています。

[1] Katayose, Y., Aritake, S., Kitamura, S., Enomoto, M., Hida, A., Takahashi, K., & Mishima, K. (2012). Carryover effect on next-day sleepiness and psychomotor performance of nighttime administered antihistaminic drugs: a randomized controlled trial. Human psychopharmacology27(4), 428–436. https://doi.org/10.1002/hup.2244

[2] Culpepper, L., & Wingertzahn, M. A. (2015). Over-the-Counter Agents for the Treatment of Occasional Disturbed Sleep or Transient Insomnia: A Systematic Review of Efficacy and Safety. The primary care companion for CNS disorders17(6), 10.4088/PCC.15r01798. https://doi.org/10.4088/PCC.15r01798

[3] McMillan, J. M., Aitken, E., & Holroyd-Leduc, J. M. (2013). Management of insomnia and long-term use of sedative-hypnotic drugs in older patients. CMAJ : Canadian Medical Association journal = journal de l’Association medicale canadienne185(17), 1499–1505. https://doi.org/10.1503/cmaj.130025