季節が睡眠に与える影響とは?知っておきたい最新の研究結果

季節の移り変わりとともに、私たちの睡眠時間や質も変化していくのをご存知でしょうか。実は、季節が睡眠に与える影響について、幾つかの調査研究が行われています[1,2]。それによると、冬は睡眠時間が長くなり、夏は短くなるという傾向があるようです。不眠でお悩みの方は、こうした季節の影響を理解しておくことが大切かもしれません。

冬は睡眠時間が長く、夏は短くなる?

アメリカで行われた216人を対象とした研究では、参加者の1年間の睡眠パターンを測定しました[1]。その結果、冬の睡眠時間は夏よりも平均11.4分長くなっていました。また、この季節による変動は、年齢や性別、居住地域によっても異なることが明らかになりました。

例えば、季節による睡眠時間の変化は中年層と高齢層で顕著に見られましたが、若年層ではそのような傾向は確認されませんでした。また、女性の方が男性よりも季節の影響を受けやすく、冬と夏の睡眠時間の差が大きいことも分かっています。

日本人を対象とした研究でも季節による症状の変化が明らかに

日本人1,388人を対象とした別の研究でも、冬の睡眠時間が最も長く、夏が最も短いという結果が得られています[2]。この研究では、1年を通して春夏秋冬の4回、参加者の睡眠時間や睡眠の問題についてデータを収集しました。

そして、中年層と高齢層では季節による睡眠時間の変化が確認されたものの、若年層ではそのような傾向は見られませんでした。これは、アメリカの研究結果と一致していますね。

さらに興味深いことに、睡眠時間の季節変動だけでなく、睡眠障害に伴う症状の季節変動についても、年齢群によって異なった特徴があることがわかりました[2]。

  • 若年層では、中途覚醒のしやすさ(夏に増加)と日中の眠気(春や夏に増加)に季節性がある
  • 中年層では、入眠の難しさ(春や夏に増加)と中途覚醒のしやすさ(春や夏に増加)に季節性がある
  • 高齢層では、不眠症状については季節による違いは見られない

季節による睡眠変動の要因は?

では、なぜ季節によって睡眠時間や質に変化が生じるのでしょうか。いくつかの要因が指摘されています。

まず、冬と夏では日照時間の長さが大きく異なります。日照時間の変化は、体内時計を調整する働きを持つメラトニンの分泌に影響を与えます[1]。冬は日照時間が短いため、メラトニン分泌が早く始まり、止まるのは遅くなるため、睡眠時間が長くなる傾向にあると考えられています。

また、気温の変化も睡眠に影響を及ぼす可能性があります。アメリカの研究では、様々な変数の中で、気温が就寝時刻と起床時刻に影響していることが示唆されました[1]。ただし、日本の研究では、気温よりも日照時間の方が睡眠時間の季節変動に影響している可能性が指摘されています[2]。

さらに、社会的な要因も関係しているかもしれません。日本では、春は新学期や新年度の始まりの時期です。環境の変化によるストレスが、春先の睡眠の問題に関与している可能性が考察されています[2]。

まとめ

いかがだったでしょうか。当記事では、季節の変化が睡眠に与える影響についてご説明しました。

季節の移ろいに合わせて、自分の睡眠状態の変化に気づき、適切に対処していくことは重要です。例えば、春は生活リズムの変化に伴ってストレスを感じやすくなりますし、夏は熱帯夜で寝苦しい日が続きます。そうした季節特有の問題に対して、入眠儀式の調整、室温・寝具の調整、規則正しい生活習慣の維持など、できる対策を講じていきましょう。

当クリニックでは様々な要因を考慮しながら、一人ひとりに合ったアドバイスを提供しております。生活習慣の工夫から、必要に応じて薬物療法まで、幅広い選択肢の中から最適な方法をご提案いたします。ぜひお気軽にご相談ください。

【参考文献】

  1. Mattingly, S.M., Grover, T., Martinez, G.J. et al. The effects of seasons and weather on sleep patterns measured through longitudinal multimodal sensing. npj Digit. Med. 4, 76 (2021) https://doi.org/10.1038/s41746-021-00435-2
  2. Suzuki, M., Taniguchi, T., Furihata, R., Yoshita, K., Arai, Y., Yoshiike, N., & Uchiyama, M. (2019). Seasonal changes in sleep duration and sleep problems: A prospective study in Japanese community residents. PLOS ONE, 14(4), e0215345. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0215345