手足がむずむず・そわそわする?むずむず脚症候群ってどんな病気?

こんにちは。睡眠プライマリケアクリニック池袋です。

今日は足が「ムズムズ」「ソワソワ」する病気、その名も『むずむず脚症候群』についてご紹介いたします。

当院で「なんとなく寝付けない」「夜中に途中で目が覚めてしまう」といった相談を受けたときに「足や手がむずむずすることはありませんか?」と質問させていただくことがありますが、これがまさに『むずむず脚症候群』のチェック項目になります。(足じゃなくて手も?と思われた方、この後ご説明いたします)

むずむず脚症候群ってどんな病気?

むずむず脚症候群とはレストレスレッグス症候群(restless legs syndrome : RLS)とも呼ばれ、体にムズムズとした異常な感覚を認める病気です。最も多い箇所が主に下半身(特にふくらはぎのあたり)であるためむずむず「脚」と名付けられていますが、脚以外にも、手、腕、背中、尻、肛門付近など、体の各所にこの症状は出現します。

安静にした時(例えば、布団に入って寝ようとした時など)にその異常感覚が強くなるので、“じっとしていられない”(=”restless”)という症状を訴えるのが特徴です。

中にはピリピリとした異常感覚を訴える方や、ひりひりとした灼熱感を訴える方、そして中には耐えられないような激しい痛みを呈する方もいらっしゃいます(1)。子どもの場合には「痛み」に近い感覚を訴え、しばしば「成長痛」と誤診される場合があります。

先述のように、腕の違和感から発症するむずむず脚症候群も報告されており、その症状は実に多岐にわたります(2)。手足を動かしたいという欲求だけでなく、(特に眠っているときに、)実際に手足が勝手に動いたり、ぴくついたりしてしまうという方も多くいらっしゃいます。なお、本人に意識がない時に生じるので、覚えていないことも多いのですが、「眠りが浅い」「夜中に起きる」という症状をきたします。

原因としては「鉄不足(潜在的鉄欠乏)」や、神経伝達物質であるドパミンの作用異常などが考えられていますが、不明点も残る病気です(3)。

むずむず脚症候群の患者さんは人口の3.9%-15%程度と考えられていますが、人種によって異なることも併せて報告されています。また、日本人では100人に1-2人程度と欧米人に比べて少ないことが知られています(4,5)が、生活の欧米化や診断基準の明確化によってこの数字はもっと増えていくことが予想されています。

発症する年齢も乳幼児から90歳以上までと幅広く、中高年の患者さんだけでなく、若年性の発症も稀ではありません。

成人患者さんの38-45%が、20歳より前に症状を自覚しており(6)、さらに2004年に発表された小児におけるむずむず脚症候群の研究によると、小児の約20人に1人がむずむず脚症候群の症状を持つことも報告されています(7)。

成人患者さんでは男性より女性の割合が多い一方で、小児のむずむず脚症候群では性別による差がみられません(8)。特に小児の患者さんでは、睡眠や気分、さらには認知機能に与える影響が大きい上に(9)、ADHD(注意欠如・多動症)やうつ病とも関係があるため、早めの医療機関受診が大切です(10)。

むずむず脚症候群の診断・症状

むずむず脚症候群の診断には、医師による問診がもっとも重要です。後述する兆候や症状から確定診断とするケースが多いですが、場合によっては(睡眠時の)手足の動き等を客観的に評価するため、終夜睡眠ポリグラフ検査と呼ばれる精密検査をお受けいただくこともあります。

むずむず脚症候群は原因不明なもの(一次性)と、他の疾患やお薬が原因となって生じるもの(二次性)に分けられます。二次性むずむず脚症候群の原因(11)としては、睡眠時無呼吸症候群や鉄不足、脊髄疾患、抗アレルギー薬などによる薬剤性などが報告されていますので、これらが当てはまる方はまず、その原因を改善することが大切です。そのため、むずむず脚症候群の症状がある方には、睡眠時無呼吸症候群のチェックや背骨のMRI検査をお勧めする場合もあります。

むずむず脚症候群の典型的な兆候として以下の4つが挙げられています(12)。

  • (脚の異常な感覚によって、)脚を動かしたいという欲求を感じることがある
  • 安静にしているとき、横になったり座ったりしているようなときには、脚を動かしたい欲求・異常な感覚が強くなる
  • それらは運動やストレッチなどで、体を動かすことによって一時的に改善することがある
  • 日中よりも夕方や夜間に症状がある、あるいは悪化する

日中に強い眠気がある場合や家族にむずむず脚症候群の患者さんがいる場合には、さらに強くむずむず脚症候群を疑います(12)。

むずむず脚症候群の治療

上記のような二次性むずむず脚症候群であれば、まずその原因にアプローチします。原因がわからない場合には生活習慣の改善と薬物療法の2つが重要です。鉄の欠乏を改善することで症状が軽くなるケースもあり(13)、診察では採血をして、血液中の鉄分やフェリチン(貯蔵されている鉄分量)を測定することもあります。

また、カフェインの摂取やアルコールの摂取が症状を悪化させることも知られており(14)、それらを減量・中止することを提案させて頂く場合もあります。また現在喫煙されているという方では、禁煙によって症状が軽くなる(14, 15)ことも報告されています。

薬物療法では、一般に神経痛に効果のある薬剤や(16)、神経伝達物質ドパミンに作用する内服薬や貼付剤(はり薬)が使われます。上記の通り鉄を補充するために鉄剤(飲み薬・注射剤)の投与を行うこともあります。

むずむず脚症候群はよくある風邪や頭痛と違って、まだまだマイナーで発見の難しい病気です。

もし上のような症状にお悩みの方がおりましたら、是非一度お気軽にご相談ください。

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参考文献

[1] Garcia-Borreguero D, Silber MH, Winkelman JW, Högl B, Bainbridge J, Buchfuhrer M, Hadjigeorgiou G, Inoue Y, Manconi M, Oertel W, Ondo W, Winkelmann J, Allen RP. Guidelines for the first-line treatment of restless legs syndrome/Willis-Ekbom disease, prevention and treatment of dopaminergic augmentation: a combined task force of the IRLSSG, EURLSSG, and the RLS-foundation. Sleep Med. 2016 May;21:1-11. doi: 10.1016/j.sleep.2016.01.017. Epub 2016 Feb 23. PMID: 27448465.

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