睡眠障害の受診歴は生命保険加入や転職に影響する?

睡眠障害で精神科・心療内科や睡眠外来を受診したことがある方の中には、「受診歴が将来の生命保険加入や転職に不利に働くのではないか」と心配される方も多いのではないでしょうか。本記事では、そんな不安を解消し、正しい情報をお伝えします。

結論から言えば、睡眠障害での受診歴が自動的に不利になることはありません。ただし、状況に応じて適切な開示が必要な場合もあります。詳しく見ていきましょう。

診療記録は勝手に見られることはない

まず安心していただきたいのは、あなたの診療記録やレセプト(診療報酬明細書)は、厳重に保護されているということです。生命保険会社や転職先の企業が、あなたの同意なしにこれらの情報を入手することはできません[1]。つまり、あなたが知らないうちに精神科・心療内科や睡眠外来への受診歴が漏れる心配はないのです。

生命保険加入時に必要な告知

生命保険に加入する際、健康状態の告知が求められます。ここで重要なのは、質問された項目にのみ答えればよいということです。多くの場合、以下のような質問があります[2](以下は例示的ですので、実際の項目を確認下さい):

  • 最近3ヶ月以内の医療機関受診の有無
  • 過去2年以内の健康診断での異常の有無
  • 過去5年以内の入院や手術の有無

これらの期間に該当しない場合や、睡眠障害が質問項目に含まれていない場合は、告知する必要はありません。また、分類上、睡眠障害は精神疾患に含まれません。ICD-10という日本も採用する国際的な疾患分類の上では、精神疾患とは別の分類(Gコード)に属し、ICD-11という次期分類では「睡眠障害」という独立した分類に属します。ただし、主治医から睡眠障害の原因として適応障害やうつ病等と診断されている場合は別途考慮が必要です。

転職時の既往歴開示

転職の際に面接などで、健康状態について尋ねられることがありますが、健康状態について企業は本人の同意なく聴取することができません(厚労省からガイドラインが出ています)[3]。ただし、仕事に関連して特別な配慮が必要な場合は、その旨を伝えることが大切です。これは、あなたと雇用主の双方にとって、より良い職場環境を作るためにも有用となります。

まとめ

睡眠障害での受診歴があることで、自動的に保険加入や転職が不利になることはありません。ただし、適切な情報開示は重要です。正直に必要な情報を伝えることで、信頼関係の構築や良いコミュニケーションに繋げることができます。

一般成人の30〜40%が何らかの不眠症状を有しているとも報告されている中で、睡眠障害は多くの人が経験する一般的な問題となりつつあります[4]。適切な治療を受けることで生活の質が向上し、仕事のパフォーマンスを上げることも可能です。適切なアドバイス・治療を通じて、より良い毎日を送れるよう、睡眠外来がお手伝いさせて頂きます。

参考文献

[1] 日医ニュース 第861号(平成9年7月20日) https://www.med.or.jp/nichinews/n090720a.html
[2] 生命保険協会 2017年 正しい告知を受けるための対応に関するガイドライン https://www.seiho.or.jp/activity/guideline/pdf/announce.pdf
[3] 厚生労働省:採用選考時に配慮すべき事項 と 就職差別につながるおそれのある質問 https://jsite.mhlw.go.jp/hiroshima-roudoukyoku/content/contents/001193870.pdf
[4] 厚生労働省:E-ヘルスネット 不眠症 https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-02-001.html