良質な睡眠を手に入れるための枕選びガイド!最新の研究を基に解説

こんにちは、睡眠プライマリケアクリニックです。

快適な眠りは、私たちの健康と日々の活力に不可欠です。しかし、枕が合わなければ良い睡眠は夢のまた夢。いまいち良い枕の選び方がわからなかったり、しっくりくるものが見つからない人は多いのではないでしょうか。
枕選びのポイントは「高さ」と「固さ」にあります。今日は、最新の研究をもとに、睡眠の質と枕の関係を解説し、具体的にどのようなことに注意すれば良いかをご紹介します!

枕がもたらす睡眠の質との深い関係

まずそもそも、枕と睡眠にはどのような関係があるのでしょうか?

枕は睡眠環境を構成する重要な要素であり、頭と首を支え、頚椎の正常なカーブ(図1)を保ちます。これにより首筋の筋肉をリラックスさせ、頸椎椎間板(図2)への圧力を減少させたり、負荷をうまく分散させたりする役割があります[1]。枕の高さが低すぎると頚椎の位置が不適切になり、首や肩の痛み、筋肉の凝りを引き起こす可能性があります。一方で高すぎる枕もまた、頚椎の角度を不自然に増大させ、血液循環の障害や筋肉の緊張を招く恐れがあるため、適切な枕の高さの選択が睡眠の質を左右するポイントとなります[2]。

図1 正常なカーブの頸椎(左)とストレートネック(右)の比較[1]

図2 (頸椎)椎間板について 

理想的な高さの枕は、頚椎の正常なカーブを維持するために必要な頭と首への十分なサポートを提供することができます。また、頭と首を支える力の違いが頚椎の位置を正しい場所に維持する能力と見なされ、これもまた枕の高さ選びの重要なポイントとされています[2]。図3では、一番左または左から2つ目の図が圧が分散していることが分かります(右2つの図は首に対する圧が高すぎる)。

図3 4つの枕の高さにおける典型的な被験者の頭蓋および頸部の圧力分布[2]

いびきと枕の高さの関係性

また、良い枕を選ぶことは、いびきの改善にもつながります。睡眠中の枕を使った姿勢調整によって喉頭部(鼻の奥から食道の入り口までの部分)のスペースを拡大することでいびきを防ぐ新しい方法が提案されています[3]。

咽頭部が狭まるといびきが発生しやすくなります(図4)。高すぎる枕は枕は睡眠への悪影響だけでなく、頸部の血管による血液循環障害や首の筋肉の緊張を引き起こし、長期使用では脳出血や脳卒中を引き起こすリスクがあるとされています。高すぎる枕が脳卒中の原因になっていることを示した日本の研究もあります[3](この研究では、枕が高いことで発症する疾患を”殿様枕症候群”と呼んでいます)。したがって、血液循環を阻害せず、神経を圧迫しないような高さの枕を選ぶべきです[4]。日本人の体格を考慮すると、3cm~6cm程度の高さの枕がよいでしょう。高さには当然個人差がありますが、日本人は肩が大きくない(=肩と後頭部の高さの差が大きくない)ため、高い枕を使うと、咽頭が閉塞し、いびきが増えやすいことが知られています。タオルを数枚重ねたくらいの高さの枕でも十分なケースが多いです。

図4 いびきと睡眠時無呼吸の原因と過程:
(a) 正常、(b) いびきをかくときに中咽頭が狭くなる、および (c) 睡眠時無呼吸の間に気道がほぼ閉塞される[4]

高反発枕の利点

枕が合わない、首が痛い、という方には、高反発の枕がおすすめです。高反発ウレタン枕、ラテックス枕、ファイバー枕等が良いでしょう。

複数の質の高い研究を系統的に分析した報告よると、高反発枕(本研究では、ラテックス枕)の使用により、首の痛みが軽減されることが分かりました (P<0.001)。それだけでなく、覚醒時の痛みと首の障害も軽減され、睡眠の満足度が向上することも分かっています。[5]

高反発枕は、寝返りのうちやすさや姿勢を支えてくれるだけでなく、弾力や復元力が高いので、すぐにへたらず、長期間使い続けられるというメリットもあります。ウレタン等は洗濯が可能なタイプも多く、取り扱いが楽なものも多いです。

まとめ

良質な睡眠と健康な毎日を手に入れるため、枕選びにおいては「高さ」と「固さ」に注意することが重要です。枕を購入する際には、首の角度や寝返りのうちやすさ、姿勢を考慮することが重要ですから、現地で試してから購入することも有用です。

また、枕を変えても眠りづらい方は、睡眠を専門に扱う医療機関に受診されることをおすすめします。皆さまが良い睡眠を得られるよう、本コラムが参考になれば幸いです。

参照文献:

[1] Yang F, Wang Z, Zhang H, Xie B, Zhao H, Gan L, Li T, Zhang J, Chen Z, Li T, Huang X, Chen Y, Du J. Prevalence and risk factors of occupational neck pain in Chinese male fighter pilots: a cross-sectional study based on questionnaire and cervical sagittal alignment. Front Public Health. 2023 Oct 31;11:1226930. doi: 10.3389/fpubh.2023.1226930. PMID: 38026361; PMCID: PMC10643867.

[2] Lei JX, Yang PF, Yang AL, Gong YF, Shang P, Yuan XC. Ergonomic Consideration in Pillow Height Determinants and Evaluation. Healthcare (Basel). 2021 Oct 7;9(10):1333. doi: 10.3390/healthcare9101333. PMID: 34683013; PMCID: PMC8544534.

[3] Shuhei Egashira, Tomotaka Tanaka, Takayuki Yamashiro, Satoshi Saito, Soichiro Abe, Takeshi Yoshimoto, Kazuki Fukuma, Hiroyuki Ishiyama, Eriko Yamaguchi, Yorito Hattori, Soshiro Ogata, Kunihiro Nishimura, Masatoshi Koga, Kazunori Toyoda, Stéphanie Debette, Masafumi Ihara “Shogun pillow syndrome”. European Stroke Journal. 2024;0(0). doi:10.1177/23969873231226029

[4]Ahn D, Choi H, Lee J, Heo SP. Development and Evaluation of a Pillow to Prevent Snoring Using the Cervical Spine Recurve Method. J Healthc Eng. 2022 Aug 17;2022:2561107. doi: 10.1155/2022/2561107. PMID: 36032543; PMCID: PMC9402368.

[5]Chun-Yiu JP, Man-Ha ST, Chak-Lun AF. The effects of pillow designs on neck pain, waking symptoms, neck disability, sleep quality and spinal alignment in adults: A systematic review and meta-analysis. Clin Biomech (Bristol, Avon). 2021 May;85:105353. doi: 10.1016/j.clinbiomech.2021.105353. Epub 2021 Apr 19. PMID: 33895703.