「昨日は10時間も布団に入っていたのに、ほとんど眠れなかった気がする。」
そのように感じた経験はありませんか。
実は、睡眠時間の“感じ方”と、脳波で測定した実際の睡眠時間は必ずしも一致しないことが、海外の研究で示されています[1]。
しかもこのズレは、不眠症の患者さんだけでなく、健康な人にも起こり得ることが報告されています。
なぜこのような「睡眠の錯覚」が起こるのでしょうか。
本記事では、入院下で行われた研究結果をもとに、睡眠時間の感じ方がズレる理由について、わかりやすく解説します。
睡眠の評価には、大きく分けて2つの方法があります。
不眠症の診断は、主に本人の訴えに基づいて行われます。
しかし過去の研究では、「実際の睡眠時間よりも短く感じている」ケースが存在することが示されています[1]。
このような現象は「睡眠誤認」と呼ばれており、重要なのは、これが必ずしも“思い込み”という単純な問題ではなく、睡眠中の脳の状態や時間感覚の処理が関係している可能性がある点です。
この現象を検討するために行われたのが、Bianchiらの研究です[1]。
というような研究です。
通常、健康な人は自分の睡眠時間を比較的正確に見積もると考えられています。
実際に、最初の“普段通りの睡眠”では、主観と客観はほぼ一致していました。

図1(DおよびE)では、
が比較されています。
結果は興味深いものでした。
という結果になりました。
特に12時間の睡眠機会があった群では、
となり、約100分以上も短く感じています[1]。
つまり、「長く寝たのに眠れなかった気がする」という感覚は、健康な人でも生じ得る現象だったのです。
では、このズレは「眠りが浅いから」起こるのでしょうか。
研究では、
との関連が検討されました。
しかし、
という結果でした[1]。
つまり、睡眠の主観的体験は、単なる睡眠の深さだけでは説明できない、より複雑な現象である可能性が示唆されています。
今回ご紹介した研究で明らかになったことは以下の通りです。
「眠れていない気がする」という感覚はつらいものですが、それが必ずしも“全く眠れていない”ことを意味するとは限りません。
睡眠について強い不安が続く場合は、自己判断だけで抱え込まず、客観的な評価を含めて医療機関で相談することも一つの選択肢です。
参考文献
[1]Bianchi MT, Wang W, Klerman EB. Sleep misperception in healthy adults: implications for insomnia diagnosis. J Clin Sleep Med. 2012 Oct 15;8(5):547-54. doi: 10.5664/jcsm.2154. PMID: 23066367; PMCID: PMC3459201.