睡眠プライマリケアクリニックは、肥満の改善や食欲のコントロールによる睡眠障害の治療、あるいは、睡眠障害の結果として生じた肥満の治療などを目指す「睡眠肥満外来」を開設します。
いくつかの睡眠障害は肥満と密接な関係があります。この外来では、たとえば、閉塞性睡眠時無呼吸(以下、睡眠時無呼吸)などの睡眠障害に対して、エビデンスに基づく栄養指導や薬物療法を行い、肥満を改善させることによる根治療法を目指します。

肥満は、睡眠時無呼吸の最も大きな危険因子の一つです。
舌や口腔内、首など、気道の周囲に脂肪がつくことで、睡眠中に上気道が狭くなり、呼吸が繰り返し止まってしまったり、酸素がうまく取り入れられなくなってしまうのが睡眠時無呼吸です。気道が狭くなる状態はいびきも引き起こします。睡眠時無呼吸によって体内の酸素が低下すると、眠りが分断されやすくなり、熟睡も大きく妨げられます。こうした状態が続くと、日中の強い眠気や集中力低下など、日常生活にも影響を及ぼし、さらには心血管疾患等による死亡率が大幅に高まってしまいます。
体重の増減は、睡眠中の無呼吸の程度に大きく関係します。
たとえば、体重が10%増えると無呼吸の重症度(AHI)が平均で約32%悪化し、逆に10%減ると約26%改善することが報告されています。さらにこの研究の中では、研究開始時に無呼吸がなかったあるいは軽症だった人で、体重が10%以上増えた人では、新規発症や中等度以上の無呼吸となるリスクが、約6倍になることも報告されています[1]。


このように肥満が主な原因となる睡眠時無呼吸の場合、減量によって症状の改善や、場合によっては治癒も見込めます。
睡眠時無呼吸に対しては、CPAP治療(睡眠中に空気を送り、上気道の閉塞を防ぐ治療)やOA治療(マウスピースによる治療)などが用いられますが、いずれも対症療法です。根本的な改善には、体重を減らし、気道の圧迫そのものを軽減することが重要です。
※睡眠時無呼吸症候群について詳しくは、当院のコラム 「閉塞性睡眠時無呼吸症候群とは」 もあわせてご覧ください。
一方で、睡眠時無呼吸があると、ホルモンの異常を介して太りやすくなるという悪循環が起きることも指摘されています。
睡眠が不足したり、途中で何度も目が覚めるような状態が続くと、体のホルモンバランスに変化が起こります。睡眠時間が短いと食欲を抑えるホルモン(レプチン)が減り、逆に食欲を高めるホルモン(グレリン)が増えることが知られています[2]。また、実質的な睡眠時間が減少すると、代謝を司る甲状腺ホルモンの分泌も低下してしまいます。睡眠時無呼吸では、呼吸の中断により睡眠が分断されたり、深い眠りが減少したりしてしまうことで、食欲が亢進してしまったり、代謝が低下してしまったりして、体重が増加しやすくなってしまうと考えられています[3]。
また、睡眠時無呼吸以外の睡眠障害も肥満に関係することがあります。たとえばナルコレプシー(特に1型)は、オレキシン神経の欠損や分泌低下により日中の眠気が生じる疾患ですが、オレキシンは古くはヒポクレチンと呼ばれ、摂食等と密接に関わるホルモンでもあります。その結果、ナルコレプシーの患者さんは特に成人以降に肥満が生じやすくなってしまうことが知られています。さらに、「夜間摂食症候群」や「睡眠関連食行動異常」などの睡眠障害は、夜間の過食により肥満を生じてしまうこともあれば、逆に、食欲の異常でこれらの疾患を生じてしまうこともあります。
このように、肥満が睡眠の質を悪化させることもあれば、睡眠の問題が肥満の一因となることもあります。

睡眠時無呼吸の根本的な改善には、体重のコントロールが欠かせません。しかし、食事制限や運動だけで減量を達成することは容易ではありません。近年では、GLP-1/GIP受容体作動薬やSGLT2阻害薬など、摂食や血糖のコントロールの仕組みに作用して体重減少を促す治療が登場しています。生活習慣の見直しと組み合わせることで、効果的な体重コントロールが期待されています。
2024年に行われた大規模な臨床試験では、肥満を伴う中等症〜重症の睡眠時無呼吸の患者に対して、GLP-1/GIP受容体作動薬を用いた肥満の治療を行ったところ、体重減少とともに無呼吸低呼吸指数(AHI)の明らかな改善が達成されました[4]。肥満の改善により夜間の気道圧迫を軽減できるため、減量治療は、睡眠時無呼吸の根本的な改善につながる治療となります。

当院では、自由診療として、GLP-1受容体作動薬、GLP-1/GIP受容体作動薬、SGLT2阻害薬などを用いて、肥満治療による睡眠障害の改善や、睡眠障害に伴って生じてしまった肥満を治療する体制を提供します。生活習慣の見直しから内服治療まで、お一人おひとりに合わせた方法でサポートします。
次のような方はご相談ください。
詳しくは当院ホームページの「睡眠肥満外来」のご案内をご覧ください。
参考文献
[1] Peppard PE, et al. Longitudinal Study of Moderate Weight Change and Sleep-Disordered Breathing. Jama. 2000; 284(23): 3015–3021.PMID: 11122588
[2] Taheri S, et al. Short Sleep Duration Is Associated with Reduced Leptin, Elevated Ghrelin, and Increased Body Mass Index. PLoS Med. 2004; 1(3): e62. PMID: 15602591 ; PMCID: PMC535701.
[3] Harsch IA, et al. Leptin and ghrelin levels in patients with obstructive sleep apnea: effect of CPAP treatment. Eur Respir J. 2003; (2):251-257. PMID: 12952256
[4] Malhotra A, et al. Tirzepatide for the Treatment of Obstructive Sleep Apnea and Obesity. N Engl J Med. 2024; 391(31): 1193–1205. PMID: 38912654 ; PMCID: PMC11598664.