「よく寝ると背が伸びる?」──子どもの睡眠と成長を研究から整理する

「よく寝ると背が伸びる?」という疑問

「寝る子は育つ」「成長期にしっかり眠ると背が伸びる」といった話を耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。成長期の子どもやその保護者にとって、睡眠と身長の関係は関心の高いテーマです。

しかし、現在の科学的知見では、「睡眠時間を長くとれば必ず身長が伸びる」「睡眠不足があると身長の伸びが妨げられる」といった因果関係を示す研究は報告されていません。

このコラムでは、まず身長の主な決定要因について整理したうえで、睡眠と身長の関係について研究でどこまでわかっているのかを見ていきます。とくに睡眠が分断される状態が成長にどのように関わる可能性があるのかに焦点を当ててご説明します。

身長は何で決まるのか ── 遺伝の影響をまず確認する

身長の個人差には遺伝的要因が大きく関与していることが報告されています[1]。その影響は年齢によって異なります。複数の研究結果を分析した研究では、身長の遺伝率は生まれた直後では約0.46、5歳頃までの時期では約0.5と報告されています[1]。年齢が上がるにつれて遺伝の影響は強まり、17歳頃には遺伝率は約0.76であることが示されています[1]。

この研究では、同じ家庭で育つことによる共通の影響が、身長の個人差にどの程度影響するかについても検討されており、その影響は幼い時期に最も大きく、その後は年齢とともに小さくなるとされています[1]。

小児の睡眠呼吸障害と成長

睡眠と身長の関係を考える際には、単に睡眠時間の長さだけでなく、睡眠が途中で妨げられていないかという点も重要とされています。睡眠中の呼吸障害は睡眠を妨げる原因の一つであり、とくに小児では成長に影響する可能性が指摘されています。

このような睡眠中の呼吸の問題は、睡眠呼吸障害(sleep-disordered breathing:SDB)と呼ばれます[2]。これは、「閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)」などを含む、睡眠中の呼吸障害をまとめた総称です。

SDBは、睡眠中に上気道(空気の通り道)が十分に開いた状態を保てなくなることで起こる病態で、いびきや呼吸の負担の増加などがみられます[2]。小児では、扁桃(口蓋扁桃:のどの奥にあるリンパ組織)やアデノイド(鼻の奥にあるリンパ組織)の肥大がSDBの原因となることが多く、こうしたSDBによって睡眠が妨げられると、成長に影響する可能性が指摘されています。

複数の研究をまとめて分析した研究では、SDBの小児に対して扁桃やアデノイドの手術を行った後、身長と体重が有意に増加したことが報告されています[3]。さらに、成長ホルモンの働きを反映する指標であるIGF-1およびIGFBP-3も手術後に有意に増加していました[3]。

これらの報告は、「睡眠時間が短いと身長が伸びない」という単純な関係とは異なり、睡眠中の呼吸障害によって睡眠が断片化されることが、成長に影響する可能性があることを示唆しています。

小児では、いびきが強い、睡眠中に一時的に呼吸が止まるように見える、口呼吸が続くなどの症状がみられる場合、睡眠呼吸障害(SDB)が背景にある可能性があります。このような場合には、医療機関に相談することが勧められます。

成長ホルモンと睡眠の関係

成長ホルモンは、骨や筋肉の成長、代謝の調節に関わる重要なホルモンで、成長期の身体の発達に重要な役割を担っています。成長ホルモンは一定量が持続的に分泌されるわけではなく、パルス状(波のように断続的)に分泌される特徴があります。

研究では、この成長ホルモンの分泌のピークは、夜間の睡眠中、とくに入眠後まもなく出現する深い睡眠(徐波睡眠)と同じタイミングで観察されることが示されています[4]。成長ホルモンは決まった時間帯に分泌されるわけではなく、就寝時刻を遅らせた場合にも、眠り始めてからしばらくして出現する徐波睡眠のタイミングで多く分泌されることが分かっています。

睡眠時間と身長の関連はどこまで分かっているか

学童期の子どもを対象とした観察研究では、睡眠時間と身長との関連が検討されています。5〜11歳の小児を対象とした研究では、睡眠時間が短い群で平均身長がわずかに低い傾向がみられたと報告されています[5]。しかしその差は小さく、睡眠時間が身長の伸びを左右するという因果関係を示すものではないとされています 。

現時点では、「睡眠を確保すれば必ず身長が伸びる」「睡眠不足があれば成長に影響する」といった単純な因果関係を示すことはできないと考えられています。

まとめ:成長と睡眠をどう考えればよいか

身長の個人差の多くは遺伝的要因によって説明されます[1]。睡眠は成長に関わる要素の一つですが、睡眠時間を長くとれば必ず身長が伸びるといった単純な関係があるわけではありません[5]。

睡眠医学の観点から成長との関連が問題となるのは、睡眠時間そのものよりも、睡眠中の呼吸障害などによって睡眠が妨げられる状態です。とくに小児では、扁桃やアデノイドの肥大による睡眠呼吸障害(SDB)が、成長の遅れと関連する可能性が指摘されています[2,3]。

小児で、いびきが強い、睡眠中に呼吸が止まるように見える、口呼吸が続くなどの症状がみられる場合には、睡眠呼吸障害が背景にある可能性があります。気になる症状がある場合やご心配な点がある場合には、一度当クリニックにご相談ください。

参考文献

  1.  Dewau R, et al. Meta-analysis of the heritability of childhood height from 560,000 pairs of relatives born between 1929 and 2004. Am J Hum Biol. 2025;37(1):e24188.  PMID:39564936
  2. Kaditis AG, et al. Obstructive sleep disordered breathing in 2- to 18-year-old children : diagnosis and management. Eur Respir J. 2016;47(1):69–94. PMID:26541535
  3. Bonuck KA, et al. Growth and growth biomarker changes after adenotonsillectomy: systematic review and meta-analysis. Arch Dis Child. 2009;94(2):83–91. PMID:18684748
  4. Takahashi Y, et al. Growth hormone secretion during sleep. J Clin Invest. 1968;47(9):2079–2090. PMID:5675428 ; PMCID:PMC297368
  5. Gulliford MC, Price CE, Rona RJ, Chinn S.Sleep habits and height at ages 5 to 11.Arch Dis Child. 1990;65(1):119–122.PMID:2301973 ; PMCID:PMC1792403