「ジリジリ音」は脳を混乱させる?科学が証明した『最高の目覚まし音』の条件

こんにちは。睡眠プライマリケアクリニックです。

「毎朝アラームと格闘している」
「やっと起きても、午前中は頭が働かない……」

もしあなたがそんな悩みを抱えているなら、それはアラームの音選びに原因があるかもしれません。 多くの人が「絶対に寝坊しないために」と、ジリジリ鳴るベル音や、けたたましい電子音のアラームを設定していますが、実はその習慣が、あなたの朝のパフォーマンスを下げている可能性があるのです。

今回は、2020年に発表されたRMIT大学(ロイヤルメルボルン工科大学)の論文[1]を主軸に、その論文内で引用されている過去の研究データ[2][3]や、最新の睡眠科学の知見[4]を交えて、「脳をすっきりと覚醒させるためのベストなアラーム音」について解説します。

そもそも「目覚めが悪い」とはどういう状態か?

朝起きた直後に感じる、頭がボーッとしたり、身体が鉛のように重かったりする感覚。これを専門用語で「睡眠慣性(Sleep Inertia)」と呼びます[2]。

フランスのストラスブール大学の研究(2000年)によると、睡眠慣性は覚醒直後のパフォーマンスを低下させる現象で、重度の場合、この状態は最大で4時間も続くことが報告されています[2]。 この状態が長く続くと、午前中の仕事の効率が下がるだけでなく、重要な判断ミスにつながるリスクもあります。この「睡眠慣性」をいかに早く解消するかが、良質な一日を過ごすための鍵となります。

最新研究が明かす「音」と「目覚め」の意外な関係

「大きな音で驚かせて起こすのが一番」と思っていませんか? 2020年、オーストラリアのRMIT大学(ロイヤルメルボルン工科大学)の研究チームが、この常識を覆す興味深い研究結果を発表しました。

1. 警告音よりも「メロディ」が有効

同研究チームは、起床時のアラーム音と睡眠慣性の関係を調査しました。その結果、「メロディック(旋律的)なアラーム音」を使用しているグループは、単調な「ビープ音(ジリジリ、ビービーといった音)」を使用しているグループに比べて、睡眠慣性のレベルが有意に低いことが判明しました[1]。

2. 「好きな曲」ならさらに良い?

実は、音楽と目覚めの関係については、過去にも日本で興味深い研究が行われています。 2004年の広島大学の研究(Hayashi et al.)では、「被験者が好むアップテンポなポピュラー音楽」をアラームとして使用した場合、昼寝後の睡眠慣性が軽減されるという結果が報告されています[3]。

これらの研究を合わせると、「口ずさめるようなメロディがあり、かつ自分が不快に感じない音楽」で起きる方が、脳は混乱することなく、スムーズに覚醒モードに切り替わることができると言えます。

3. 単調すぎる音は逆効果

さらにRMIT大学の研究では、メロディ性がなく単調な音(neither unmelodic nor melodic)を使っている人は、逆に睡眠慣性が強くなる傾向が見られました[1]。 一定のリズムで流れるだけの機械音や、抑揚のないノイズは、脳に対して適切な「覚醒のスイッチ」とならない可能性があるのです。

以下の図は、これらの研究結果を基に、アラーム音の種類と目覚めの質の関係をまとめたものです。

アラーム音のタイプと「目覚めの質」
メロディのある音楽
(ポップス、クラシック等)
すっきり目覚める傾向 大
ニュートラルな音
(単調な環境音など)
寝ぼけが残りやすい
警告音・ビープ音
(ジリジリ、ビービー)
不快感が強く逆効果
※McFarlane et al. (2020)[1]およびHayashi et al. (2004)[3]の研究知見に基づき作成

なぜ「メロディ」が脳を目覚めさせるのか?

従来型の「ジリジリ」という警告音は、脳活動を突然中断させ、混乱を引き起こす可能性があります。脳が「危機だ!」と反応して無理やり覚醒レベルを上げようとしますが、この急激な変化が本来の脳機能の立ち上がりを阻害してしまいます[1]。

一方で、メロディのある音楽は、リズムや音程の変化といった「時間的な展開」を持っています。 人間の脳は、流れてくる音楽の「次の展開」を無意識に予測しようとします。この予測しながら聴くという穏やかな脳の活動が、睡眠から覚醒への移行期において効率的なウォーミングアップとなり、覚醒レベルをスムーズに引き上げると考えられています[1]。

今日からできる!快眠アラームの選び方

複数の論文や専門機関の情報を総合すると、推奨されるアラーム設定は以下の通りです。

「歌える」または「ハミングできる」曲を選ぶ

これが最も重要な条件です。
歌詞がなくても構いませんが、メロディラインがはっきりしている曲を選びましょう[1]。

テンポ(BPM)は100〜120を目安に

過去の研究や一般的な推奨として、心拍数より少し早い程度(BPM100〜120)のテンポが良いとされています[4]。

音量は「徐々に大きく」

いきなり大音量で鳴らすのではなく、スマートフォンの「フェードイン機能」などを使い、徐々に音量を大きくすることで、驚きによるストレスを防ぎます。

アラームを変えても改善しない場合は?

アラーム音を工夫し、生活習慣を整えても「どうしても朝がつらい」「日中の眠気が取れない」という状態が1ヶ月以上続く場合は、必要な睡眠時間が不足していないか確認する必要があるでしょう。加えて、睡眠時無呼吸症候群(SAS)や概日リズム睡眠障害などの病気が隠れている可能性もあります。 これらの疾患は自力での改善が難しく、専門的な治療が必要な場合があります。

当院では、一人ひとりのライフスタイルに合わせた治療・指導を行っています。毎日の目覚めに違和感がある方は、ぜひ一度お気軽にご相談ください。 良質な目覚めを手に入れて、充実した毎日を送りましょう。

参考文献

[1] McFarlane SJ, Garcia JE, Verhagen DS, Dyer AG (2020) Alarm tones, music and their elements: Analysis of reported waking sounds to counteract sleep inertia. PLoS ONE 15(1): e0215788.

[2] Tassi P, Muzet A (2000) Sleep inertia. Sleep Medicine Reviews, 4(4): 341-353.

[3] Hayashi M, Uchida C, Shoji T, Hori T (2004) The effects of the preference for music on sleep inertia after a short daytime nap. Sleep and Biological Rhythms, 2(3): 184-191.

[4] Healthline (2020) Best Alarm Sounds: Can They Reduce Sleep Inertia?