「最近、疲れているように見えると言われる」 「十分に寝ているはずなのに、顔色が悪い気がする」
そんな風に感じることはありませんか。
今回紹介する研究では、睡眠を制限した後の顔写真は、十分に眠った後と比べて「より疲れて見え」「健康度が低く」「魅力が低い」と評価されることが報告されました。
本記事では、この研究結果をもとに、睡眠不足が外見に与える可能性について、医学的視点からわかりやすく解説します。
睡眠不足が外見に影響するのかどうかを検証するために行われたのが、2010年に掲載された実験研究です[1]。
この研究では、18〜31歳の健康な成人23名が対象となりました。参加者は以下の2つの条件で顔写真を撮影されています。
撮影された計46枚の顔写真(各参加者2枚)を、研究目的を知らされていない65名の第三者が評価しました。
評価項目は次の3つです。
研究結果は明確でした。
睡眠不足条件では、通常睡眠条件と比較して次のような変化が認められました(表1)。
具体的には、
と、いずれも統計学的に有意な差が認められています[1]。

さらに興味深いのは、「疲れて見える」という評価が、健康度や魅力度の低下と強く関連していた点です。
研究では媒介分析が行われ、睡眠不足が健康度や魅力度に与える影響の一部は、「疲労感の印象」を介して説明できる可能性が示されています[1]。

図1では、
特に、疲労と健康度の間には比較的強い負の相関が報告されています[1]。
つまり、「眠れていない顔」は単に疲れて見えるだけでなく、「健康状態がよくない印象」を与える可能性がある、という結果でした。
この研究では顔の具体的変化(クマ・皮膚色など)を直接分析したわけではありません。しかし、睡眠不足により生理学的変化が生じることは、これまでの研究で報告されています。
研究者らは、こうした生理的変化が「顔のわずかな変化」として現れ、それを人間が無意識のうちに読み取っている可能性を指摘しています。
また、本研究では静止した顔写真を用いて評価が行われており、まばたきや表情の動きといった動的な要素は直接検討されていません。一方で、まばたきの回数や持続時間が眠気と関連するという報告もあり[2]、こうした微細な表情変化が印象形成に関与している可能性も考えられています。
この研究は「睡眠を取れば魅力が上がる」といった因果的な結論を導くものでもありません。
あくまで、睡眠不足の顔は、第三者から疲れて見え、健康度や魅力度の評価が低くなる傾向があったという実験的観察結果です。
皆さんもわかる通り、人の顔は、社会的な情報源として重要な役割を担っています。
もちろん、外見だけで健康状態が決まるわけではありませんが、睡眠不足が「疲れて見える」印象につながる可能性がある以上、睡眠を整えることは、身体的健康だけでなく、社会的側面にも関係する可能性があります。
もし、
といった症状が続いている場合には、睡眠習慣の見直しや専門的な相談を検討することも一つの選択肢です。
参考文献
[1]Axelsson J, Sundelin T, Ingre M, Van Someren EJ, Olsson A, Lekander M. Beauty sleep: experimental study on the perceived health and attractiveness of sleep deprived people. BMJ. 2010 Dec 14;341:c6614. doi: 10.1136/bmj.c6614. PMID: 21156746; PMCID: PMC3001961.
[2]Schleicher R, Galley N, Briest S, Galley L. Blinks and saccades as indicators of fatigue in sleepiness warnings: looking tired? Ergonomics. 2008 Jul;51(7):982-1010. doi: 10.1080/00140130701817062. PMID: 18568959.