子どもの睡眠を見直す──学齢期にみられる睡眠と生活面の関係

「最近、寝る時間が遅い」「授業中に眠そうにしていると先生から聞いた」。

学齢期のお子さんについて、こうした状況に心当たりのあるご家庭も少なくないかもしれません。

思春期に近づく時期には、就床時刻が遅くなりやすく、十分な睡眠時間を確保できていないことがあります。また、睡眠時間の長さが、体重や体脂肪の状態、気分の安定、学業成績、主観的な健康感など、生活のさまざまな側面と関連することが報告されています。

このコラムでは、これらに関する研究結果をご紹介します。

子どもの睡眠が乱れやすい背景

思春期には、生物学的な変化により体内時計のリズムが後ろへずれやすく、自然と就寝時刻が遅くなるため「夜型」になりやすいことは、これまでのコラムでもお伝えしてきました。

思春期の若者(13〜18歳)を対象としたで調査[1]では、就寝前にパソコン、スマートフォン、ゲーム機などの“自分で操作しながら使う電子機器”を利用する場合、寝つきが悪い、熟睡した感じがしないなどの睡眠の問題が多いことが報告されています。また、夜間に届くスマートフォンの通知(着信音)によって目が覚める若者も一定数いて、睡眠の中断が起こりやすいことが示されています。

一方、テレビのような“受動的な視聴”では、この関連は比較的弱いことが報告されています。

        

睡眠不足が心理面・行動面に及ぼす影響

思春期の若者を対象とした複数の調査結果をまとめた報告では、睡眠不足が心理面や行動面のさまざまな特徴と関連していることが示されています[2]。

睡眠時間が短い若者では、次のような傾向がみられることが報告されています。

  • 気分が落ち込みやすい
  • 不安を感じやすい
  • 気分が不安定になりやすい
  • 集中しにくい、注意が続きにくい
  • 判断力が低下しやすい
  • 衝動的に行動しやすい
  • 日中に眠気を感じやすい

これらの研究は、因果関係を直接調査した研究ではなく、睡眠時間の不足がこれらの問題を引き起こしているかどうかまでは明らかではありません。ただし、睡眠不足と心理・行動面の指標との関連は、多くの研究で一貫して報告されています[2]。

睡眠時間と体重・学業・生活の質との関連

学齢期から思春期(5〜17歳)の子ども・若者を対象とした複数の研究をまとめた報告では、睡眠時間の長さが次のような項目と関連することが示されています[3]。

・ 体重・体脂肪

睡眠時間が長い子ども・若者では、BMI や体脂肪などの値が低い傾向を示す研究が多く報告されています。

・学業成績

睡眠時間が長いほど、学業成績が良いとする研究があります。ただし、これらの研究は睡眠と成績の“関連”をみたもので、睡眠時間と成績の因果関係については明らかではありません。

・ 生活の質(QOL:日常生活の快適さや満足度)・主観的な健康状態

一部の研究では、短い睡眠時間が生活の質や主観的な健康状態の低さと関連することが示されています。

一方で、注意力などの認知機能、けがや事故、血圧や血糖など体の代謝に関わる検査の値などの項目については、研究結果が一致しておらず、睡眠時間との関連は明確ではないとまとめられています。

まとめ

思春期には、体内時計のリズムが後へずれやすく、さらに就寝前の電子機器利用などの影響により、睡眠が乱れやすくなることが報告されています[1][2]。また、睡眠時間の長さは、気分の安定、体重や体脂肪などの数値、学業、生活の質など、生活のさまざまな側面と関連することが示されています[2][3]。

日々の睡眠の状況と、日中の気分や集中しにくさなどの様子を合わせて振り返ることで、生活リズムを見直すきっかけになる場合があります。睡眠の乱れが続くときや、睡眠に関して心配や悩みがある場合には、お気軽に当院へご相談ください。

参考文献

[1] Gradisar M, et al. The Sleep and Technology Use of Americans: Findings from the National Sleep Foundation’s 2011 Sleep in America Poll. PMCID: PMC3836340 ; PMID: 24340291

[2] Owens J, Adolescent Sleep Working Group, Committee on Adolescence.  Insufficient Sleep in Adolescents and Young Adults: An Update on Causes and Consequences. Pediatrics. 2014;134(3): e921–e932. PMCID: PMC8194472 ; PMID: 25157012

[3] Chaput J-P, Gray CE, Poitras VJ, Carson V, Gruber R, Olds T, et al. Systematic review of the relationships between sleep duration and health indicators in school-aged children and youth. PMID: 27306433