たくさん寝るよりも効果的? 寿命を左右する「睡眠リズム」の真実

たくさん寝るよりも効果的? 寿命を左右する「睡眠リズム」の真実

こんにちは。睡眠プライマリケアクリニックです。

「睡眠時間は足りていますか?」

これは健康を語る上で、最もよく使われる質問の一つです。

厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド 2023」によると、ベストな睡眠時間は個人差が大きいものの、成人では6時間以上を目安に確保すべきとされています[1]。

しかし、近年の大規模な研究によって、睡眠時間以上に「睡眠の規則性」、つまり「毎日同じ時間に寝て、同じ時間に起きること」が私たちの健康や寿命にまで影響を与える可能性がある、という衝撃的な事実が報告されました。

本記事では、2024年に発表された英国の医学研究をもとに、健康長寿の鍵となる「睡眠リズム」の重要性と、その整え方について詳しく解説します。

「睡眠リズム」が規則正しい人は死亡リスクが低い

今回主にご紹介するのは、ダニエル・P・ウィンドレッド氏らによる、約6万人の睡眠データと死亡リスクの関係を長期間追跡した研究です [2]。

研究の概要

  • 研究方法: 「前向きコホート研究」という、数万人規模の集団を長期間にわたって追跡し、生活習慣と病気の発生との関連を調べる研究手法が用いられました。
  • 対象者: 英国の地域住民データベース「UK Biobank」に登録されている、平均年齢62.8歳の男女60,977名。
  • データ収集: 参加者の腕に加速度センサー(活動量計)を7日間装着してもらい、合計1,000万時間以上もの客観的な睡眠データを収集しました。
  • 追跡期間: 加速度センサーによる記録から最長7.8年間、死亡率を追跡。
  • 指標:
    • 睡眠規則性指標 (Sleep Regularity Index: SRI): 毎日の睡眠・覚醒パターンの類似性を0(ランダム)から100(完全に規則的)で数値化した指標。
    • 睡眠時間: 加速度センサーが記録した客観的な睡眠時間。

研究で明らかになったこと

追跡期間中に1,859名の死亡が記録されました。そして、睡眠リズムの規則性(SRIスコア)によって参加者を5つのグループに分けて比較したところ、以下の結果が確認されました。

最も睡眠リズムが不規則なグループ(下位20%)と比較して、それ以外のグループでは…

全ての原因による死亡リスクが20~48%低下

がんによる死亡リスクが16~39%低下

心血管・代謝疾患による死亡リスクが22~57%低下

この結果は、年齢、性別、民族、さらには社会経済状況や生活習慣(喫煙、運動習慣など)といった様々な要因を考慮しても、統計的に意味のある差として認められました。

さらにこの研究では、「睡眠の規則性」と「睡眠時間」のどちらがより死亡リスクに強く関わっているかも比較されました。

その結果、「規則性」のほうが「時間」よりも死亡リスクへの関与がより大きいことが示されたのです。

睡眠規則性指数(A)および睡眠時間(B)による、加速度計の記録から研究終了点までの参加者の累積生存率

(※Daniel P Windred et al.Sleep regularity is a stronger predictor of mortality risk than sleep duration: A prospective cohort study.Sleep, Volume 47, Issue 1, January 2024, zsad253をもとに作成)

なぜ不規則な睡眠は体に悪いのか?

この研究では、不規則な睡眠が悪影響を及ぼす詳細なメカニズムまでは示されていません。しかし、その大きな理由として、概日リズム(がいじつリズム)、いわゆる「体内時計」の乱れを挙げています。

私たちの体は、約24時間周期でホルモン分泌や血圧、血糖値などを調整する体内時計を持っています[3]。毎日バラバラの時間に寝起きすると、この体内時計にズレが生じ、体の様々な機能の歯車が狂い始めます。その結果、血糖値や血圧のコントロールが乱れたり、体内で微弱な炎症が続いたりすると考えられています。こうした状態が長く続くことが、がんや心血管疾患、さらには肥満や糖尿病などのメタボリックシンドロームのリスクを高める原因となるのです [4]。また、睡眠リズムの乱れはうつ病などの精神的な不調とも関連があることが指摘されています [5]。

あなたの睡眠リズムは大丈夫?今日からできる整え方

論文の結果を基に、今日から実践できる睡眠リズムの整え方をご紹介します。

1. 起床時間と就寝時間を毎日一定にする

まず最も大切なのは、起床時間と就寝時間を毎日一定に保つことです。特に、平日と週末のズレをできるだけ小さくすることが重要です。ご紹介した研究で、最も規則性が高いとされた上位20%の人々は、毎日の就寝・起床時刻のズレがおよそ1時間以内であったと報告されています。週末の「寝だめ」は気持ちが良いものですが、体内時計を大きく乱す原因にもなります。平日と休日の睡眠時間のズレ(社会的ジェットラグ)が大きいほど、健康リスクが高まるという研究報告もあります [4]。休日もできるだけ平日と同じ時間に起きることを目指しましょう。

2. 朝の光を浴びて体内時計をリセットする

人間の体内時計は、厳密には24時間より少し長い周期を持っているため、毎日リセットしてあげないと、少しずつ後ろにズレていってしまいます[3]。このズレをリセットする最も効果的な方法が、朝起きて太陽の光を浴びることです。起床後に午前中に光を浴びることで体内時計がリセットされ、夜になると自然な眠りを促すホルモン「メラトニン」の分泌が高まり、規則正しい眠りのリズムが作られます。

3. スムーズな入眠を心がける

規則正しいリズムのためには、決まった時間にスムーズに眠りにつくことも大切です。日中は適度に体を動かし、就寝前のカフェインやアルコール、スマートフォンなどの電子機器が放つブルーライトを避けるといった基本的な生活習慣も、結果的に睡眠リズムを整えることに繋がります。

規則的な睡眠に役立つ朝日が差し込む寝室

まとめ

これまでの睡眠に関する健康指導では、「睡眠時間」の確保が最も重要視されてきました。もちろん、十分な睡眠時間が健康の土台であることは間違いありません。

しかし今回ご紹介した研究によって、睡眠時間以上に「睡眠の規則性」が、長期的な健康や死亡リスクと強く関連する可能性が示されました。

仕事や家庭の事情で睡眠時間を長く確保するのが難しいと感じている人にとって、「毎日同じ時間に寝て、同じ時間に起きる」というリズム作りは、より現実的で効果の高いアプローチと言えるかもしれません。まずはご自身の睡眠リズムを見直すことから始めてみてはいかがでしょうか。

もし、ご自身で生活習慣を工夫しても「寝つきが悪い」「途中で目が覚める」といったお悩みが改善しない場合や、日中の強い眠気など気になる症状が続く場合は、どうぞお一人で悩まず、お気軽に当クリニックへご相談ください。専門的な観点から、あなたの健やかな眠りをサポートいたします。

参考文献

[1]健康づくりのための睡眠ガイド 2023|厚生労働省

[2]Daniel P Windred et al.Sleep regularity is a stronger predictor of mortality risk than sleep duration: A prospective cohort study.Sleep, Volume 47, Issue 1, January 2024, zsad253,

[3]厚生労働省 e-ヘルスネット「概日リズム睡眠障害」

[4]Fritz, J., Phillips, A. J. K., Hunt, L. C., et al. (2021). Cross-sectional and prospective associations between sleep regularity and metabolic health in the Hispanic Community Health Study/Study of Latinos. Sleep, 44(4), zsaa218.

[5] Pye, J., Phillips, A. J. K., Cain, S. W., et al. (2021). Irregular sleep-wake patterns in older adults with current or remitted depression. Journal of Affective Disorders, 281, 431-437.