年齢で変わる、睡眠時間と体格指数(BMI)の関係


若者は「寝不足→太りやすい」、中高年は「短くても長すぎても要注意」

睡眠時間とBMIの関係

「寝不足だと太りやすくなる」──そんな話を耳にしたことがある方も多いでしょう。
ところが、比較的新しい研究では、この「睡眠とBMIの関係」が年齢によって大きく異なることが示されています。
若者は「寝不足→太りやすい」、中高年は「短くても長すぎても要注意」。そして高齢者では、その関連があまり見られない──。

同じ睡眠時間でも、BMIとの“関係の出方”は年齢で変わる──その違いを見ていきます。

近年では、運動や食事だけでなく、睡眠も肥満に影響を与える重要な生活習慣として注目されています。
睡眠不足になると、血糖をコントロールするインスリンの働きが弱まり、グルコース(血糖)の調節が乱れます。また、満腹感をもたらすレプチンが減少し、空腹感を促進するグレリンが増えることで食欲のバランスも崩れ、本当は十分なエネルギーがあるのに「まだ足りない」と勘違いして食べすぎてしまうのです[1]。

Knutson & Van Cauter (2008) [1]に基づき作成

こうしたメカニズムに加えて、視点を広げると、実は「睡眠時間とBMIとの関係」は、年齢によってまったく違うパターンが見られることがある研究でわかっています。


どのような調査をもとにした研究か

この研究(Grandnerら, 2015)[2]は、アメリカ疾病対策センター(CDC)が行うアメリカ国民の健康・栄養調査(NHANES)2007〜2008年データを分析したものです。

対象は16歳以上の男女5,607人。健康状態や生活習慣について聞き取りや測定を行い、以下の項目を分析しました。

  • 睡眠時間:平日・勤務日の平均睡眠時間(自己申告)
    • 4時間以下(極端に短い)
    • 5〜6時間(短い)
    • 7〜8時間(平均)
    • 9時間以上(長い)
  • BMI:身長・体重を実測して算出
  • 年齢区分:本研究では以下の5区分で解析が行われましたが、考察では3区分(若年・成人・高齢)に整理して論じられています。
    • 16〜17歳
    • 18〜29歳
    • 30〜49歳
    • 50〜64歳
    • 65歳以上
  • 解析方法:性別、人種、運動量、食事内容、喫煙、飲酒、うつ症状など多数の要因を統計的に調整して、睡眠とBMIの関連を検証

年齢別の傾向

研究の結果、年齢によって異なるパターンが明らかになりました。

・若年層(18〜29歳)

若年層では、睡眠時間が短いほどBMIが高くなり、長いほど低くなるという直線的な(単調に低下する)関係が見られました。

・成人層(30〜64歳)

睡眠時間が短すぎても長すぎてもBMIが高く7〜8時間の人が最も低いというU字型の関係が見られました。特に、長時間睡眠もBMIの上昇と関連している点は注目されます。

・高齢層(65歳以上)

睡眠時間とBMIの結びつきは弱く、若年層・成人層のようなはっきりした関係は見られませんでした。

なお、短時間睡眠と体重増加の関連についてはレビュー論文でも報告されています[3]。特に若年層で顕著とされていますが、因果関係についてはっきりとはわかっていません。


日常生活へのヒント

「寝不足だと太りやすい」というイメージを持つ方は多いでしょう。この研究で、その傾向が若年層では特に強く見られ、さらに中年層では「寝すぎ」でもBMIが高くなるという結果が示されました。年齢に応じた最適な睡眠習慣を見直すきっかけになります。


睡眠に関する専門情報を発信しているアメリカの非営利団体 National Sleep Foundation(NSF)では、成人(18–64歳)は7〜9時間、65歳以上は7〜8時間が健康的な睡眠時間の目安とされています[4]。
(※これは健康全般を踏まえた一般的な目安で、BMIとの関連だけを根拠に定められた数値ではありません。)

年齢ごとに体が求める睡眠時間は変わります。睡眠とBMIの関係について今後さらに研究が進むことで、生活習慣を見直すうえでのより具体的なヒントが得られるでしょう。まずは自分の生活と睡眠習慣を振り返り、必要なら見直すことが、健康的な体重維持の第一歩です。


参考文献

[1] Knutson KL, Van Cauter E. Associations between sleep loss and increased risk of obesity and diabetes. Ann N Y Acad Sci. 2008;1129:287–304. doi: 10.1196/annals.1417.033.
[2] Grandner MA, Schopfer EA, Sands-Lincoln M, Jackson N, Malhotra A. The relationship between sleep duration and body mass index depends on age. Obesity (Silver Spring). 2015;23(12):2491-2498. doi:10.1002/oby.21247.
[3] Patel SR, Hu FB. Short sleep duration and weight gain: a systematic review. Sleep. 2008;31(5):619–626. PMID:18239586, PMCID: PMC2723045.
[4] Hirshkowitz M, et al. National Sleep Foundation’s sleep time duration recommendations: methodology and results summary. Sleep Health. 2015;1(1):40–43. doi:10.1016/j.sleh.2014.12.010. PMID: 29073412 .