こんにちは。睡眠プライマリケアクリニックです。
「眠気覚ましにエナジードリンクを飲んで頑張った」
「コーヒーが好きで、1日に何杯も飲んでしまう」
日中のパフォーマンスを上げるために欠かせないカフェインですが、その摂り方を間違えると、本人が思っている以上に深刻な睡眠トラブルを引き起こすことがあります。
「夕方以降は飲んでいないから大丈夫」と思っていませんか? 実は、摂取する「量」によっては、朝に飲んだコーヒーが夜中の不眠の原因になることさえあるのです。
今回は、最新の医学的知見に基づき、睡眠を守るための正しいカフェインとの付き合い方を解説します。

カフェインが眠気を覚ますのは、脳内で「眠気」を伝える物質アデノシンの働きをブロックするからです[1]。
通常、脳が疲れてくるとアデノシンが受容体(受け皿)にくっつき、休息モード(眠気)へのスイッチが入ります。
しかし、カフェインはこの受け皿を先取りして塞いでしまい、眠気のスイッチが入るのを邪魔してしまうのです[2]。
さらに、カフェインには交感神経を刺激して気分を高揚させたり、運動パフォーマンスを上げたりする作用もありますが、摂りすぎると不安、動悸、震えなどを引き起こすリスクもあります。

「寝る前に飲まなければ大丈夫」 そう考えている方は多いですが、実は摂取する量が多ければ、朝飲んでもアウトです。
カフェインが体内で分解され、血中の濃度が半分になるまでの時間(半減期)は、個人差はありますが平均約5時間と言われています[3]。
例えば、朝9時にカフェインを400mg(コーヒーチェーン店の大きなサイズや、500mlのペットボトルコーヒー、2Lのお茶などに相当)摂取したとします。
体内のカフェイン量は以下のように推移します。
なんと、朝飲んだはずなのに、寝る時間になっても「50mg」相当(コーヒー約半杯分)のカフェインが体内に残っている計算になります。
研究によると、睡眠時に50mg程度のカフェインが残っているだけで、深い睡眠の減少、中途覚醒(夜中に目が覚める)、睡眠時間の短縮といった悪影響が出ることが分かっています[4]。
つまり、1回に400mgを超えるような大量摂取は、1日のどのタイミングであっても睡眠に悪影響を与えるため推奨されません。
では、どれくらいなら飲んでも大丈夫なのでしょうか? 睡眠への影響を最小限にするための目安は以下の通りです。
夕食時(19時頃)に100mg以上のカフェインを摂ると、就寝時に50mg以上が体内に残ってしまいます。
夕食後はカフェインを摂らないのが無難です。もし飲むとしても、コーヒーならカップ半分以下、お茶ならコップ1杯程度に留めましょう。
コーヒーカップ1杯(約150ml)や、500mlのペットボトルのお茶1本程度であれば、ティータイム(15時頃)までに飲み終わるのが、良好な睡眠のためには安全なラインと言えます。
以下の表は、身近な飲み物に含まれるカフェイン量の目安です。自分が普段どれくらい摂取しているか確認してみましょう。特にペットボトルのお茶などは、無意識に量を飲んでしまいがちなので注意が必要です。
| 飲み物 | 100mL中の含有量 | 1回量の目安 |
|---|---|---|
| コーヒー(ドリップ) | 60mg | コーヒーカップ1杯 (150mL): 約90mg |
| 紅茶・煎茶・ウーロン茶 | 15〜30mg | 500mLペットボトル1本: 約75〜150mg |
| 玉露 | 160mg | 湯呑み1杯 (100mL): 160mg |
| エナジードリンク | 30〜300mg ※製品により大きく異なる | 1本/1缶: 30〜300mg |
出典: 志村哲祥 (2024)[4]、日本食品標準成分表などを基に筆者作成
カフェインの影響には個人差がありますが、特に注意が必要なのが子どもと高齢者です。
加齢とともに肝臓の代謝機能が落ちるため、カフェインが体から抜けるのに時間がかかります。若い頃と同じ感覚で夕方にお茶を飲んでいると、夜間の頻尿や不眠の原因になる可能性があります。
体重が軽いため、大人と同じ量でも影響が大きくなります。体重30kgの子どもなら、30〜90mg(コーヒー1杯以下)でも睡眠に悪影響が出るとされています。子どもにはコーヒーは推奨されず、お茶であっても1日コップ1杯程度に留めるべきです。

良質な睡眠は、健康の土台です。「眠れない」とお悩みの方は、まずは毎日のカフェイン摂取量を見直すことから始めてみてはいかがでしょうか。
[1]Huang, Z.-L., et al. Adenosine A2A, but not A1, receptors mediate the arousal effect of caffeine. Nature neuroscience, 2005. 8 (7): p. 858-859.
[2]Lazarus, M., et al. Arousal effect of caffeine depends on adenosine A2A receptors in the shell of the nucleus accumbens. Journal of Neuroscience, 2011. 31 (27): p. 10067-10075.
[3]ファイザー株式会社, 日本薬局方 カフェイン水和物. 医薬品インタビューフォーム, 2013.
[4]志村哲祥. 睡眠の正しい理解を促す70のトリビア Q20. 2024.