「寝不足だと頭が痛くなる気がする」「よく眠れた日は、頭痛が軽い気がする」。
こうした経験を持つ人は少なくないでしょう。
睡眠と頭痛の関係については、これまで多くの研究が行われてきました[1-4]。ただし、睡眠が頭痛を直接引き起こす原因であると明確に示されたわけではありません。一方で、睡眠の状態が、頭痛の“起こる回数”とは別に、頭痛による生活への影響の大きさと関係していることが示されています[5]。
このコラムでは、睡眠を頭痛の原因と断定するのではなく、睡眠の質が、頭痛のつらさや日常生活への支障にどのように関わっているかという点に絞って整理します。ここでは、慢性的に繰り返しやすく、代表的な頭痛である片頭痛と緊張型頭痛を対象とした研究をもとに、分かっていることを確認していきます。

睡眠不足や不眠症状のある人で頭痛が多いことは、複数の研究で報告されています。しかし、その多くは関連を調べた研究であり、睡眠が頭痛を引き起こしているのか、頭痛が睡眠を妨げているのかを直接示すものではありません[1,2]。
実際には、頭痛による痛みや不安が眠りを妨げる場合もあれば、睡眠の質が低下した状態が続くことで、同じ頭痛でもよりつらく感じられる場合も考えられます[2,4]。そのため、睡眠と頭痛の関係は「原因か結果か」という一方向の視点だけでは整理できません。
片頭痛や緊張型頭痛を対象とした研究では、頭痛の評価として、1か月あたりの頭痛日数(月の頭痛日数)が用いられることが一般的です[3]。このような評価が一般的である中で、近年の研究では、月の頭痛日数が同程度であっても、感じているつらさや生活への影響には差があることが示されています[5]。
この点を検討した研究では、睡眠の質をPSQI(ピッツバーグ睡眠質問票)、頭痛による生活への影響をHIT-6という指標で評価しています[5]。HIT-6は、頭痛によって仕事・学業・家事などの日常活動がどの程度妨げられているかを、本人の感じ方にもとづいて点数化した指標です。

表に示すように、平均的な睡眠時間には大きな差がみられない一方で、PSQIで評価される睡眠の質はいずれの頭痛タイプでも低下しており、HIT-6で評価される生活への影響は、片頭痛でより大きく、緊張型頭痛でも一定の影響が認められています。
頭痛の回数だけでは、頭痛によるつらさや生活への影響の大きさを十分に捉えることはできません。同じ頭痛日数であっても、睡眠の質によって、頭痛による生活への影響の大きさが大きく異なることが示されています。
実際、片頭痛および緊張型頭痛のある人を対象とした研究では、1か月あたりの頭痛日数が同程度の人同士を比べた場合でも、PSQIで評価される睡眠の質が低い人ほど、HIT-6で評価される頭痛による生活への影響が大きいことが報告されています[5]。
この関係は、頭痛日数の違いや、片頭痛か緊張型頭痛かといった頭痛タイプの違いを考慮した解析を行った場合でも認められていました。つまり、同じ回数の頭痛が起きていても、睡眠の質が低い場合には、頭痛による生活への支障がより大きくなっていたということになります。
この傾向は、片頭痛・緊張型頭痛のいずれにおいてもみられており、特定の頭痛タイプに限った現象ではありませんでした。

睡眠の問題が頭痛を直接引き起こす原因であるとは言えません。
しかし、片頭痛や緊張型頭痛のある人では、1か月あたりの頭痛日数が同程度であっても、睡眠の質が悪い場合に、頭痛をよりつらく感じ、日常生活への支障が大きくなりやすいことが示されています。
頭痛のつらさや生活への影響が強いにもかかわらず、「回数はそれほど多くないから」と見過ごされている場合、睡眠の状態が関係している可能性があります。睡眠に関して悩みや心配がある場合は、一人で抱え込まず、ぜひ一度ご来院ください。
参考文献