こんにちは。睡眠プライマリケアクリニックです。
十分な時間眠っているはずなのに、日中に強い疲労感やだるさが残る、集中力が続かないと感じることはないでしょうか。睡眠の問題というと、睡眠時間の短さが注目されがちですが、実は“どれだけ連続して眠れているか”も重要であることが知られています。
このコラムでは、睡眠の断片化に焦点を当て、「寝ているのに休めない」状態がなぜ起こるのかについて、研究で明らかになってきた内容をもとに解説します。

睡眠の断片化とは、睡眠中に短い覚醒が繰り返し起こり、睡眠が途切れ途切れになる状態を指します。このような覚醒は非常に短時間であることが多く、自分では「目が覚めた」と自覚しない場合もあります。そのため、睡眠時間だけを見ると十分に眠れているように見えることがあります[1]。
しかし研究では、細かな覚醒が積み重なることで睡眠の連続性が損なわれ、翌日の眠気や疲労感につながりやすくなることが示されています[1]。睡眠時間が十分であっても、断片化が強い場合には日中の調子が崩れやすくなることがあります。
夜間睡眠中、とくに深い睡眠が安定して続いているあいだには、免疫機能や炎症反応の調整など、睡眠中ならではの体のはたらきが進みやすいことが知られています。こうした深い睡眠(徐波睡眠)は、ある程度まとまって持続することが望ましいとされています[2]。
一方、深い睡眠がたびたび中断されると、こうした夜間に体を整えるはたらきが十分に進まず、睡眠による休養感が得られにくくなることがあります。
また、睡眠中に生じる変化は、自律神経活動を反映する心拍数や心拍変動などの指標を用いた研究からも調べられています。睡眠の断片化が強い場合、これらの指標に変化がみられ、自律神経の状態に乱れが生じることが報告されています[3]。こうした自律神経の変化は、睡眠中に体が十分に休まりにくくなることと関係していると考えられています。
このように、覚醒が繰り返されると、免疫反応や炎症反応、自律神経活動といった夜間に進む生理的な変化が妨げられやすくなり、「しっかり寝たはずなのに疲れが取れない」と感じやすくなることが示されています[1]。

睡眠の断片化が続くことで、本人が自覚する体の調子に影響するだけでなく、長期的な認知機能の低下との関連も報告されています。
ここでは、短期的・長期的な影響が生じるとき、体の中でどのような変化が起きているかについて、研究から示されている内容をご紹介します。
短期間における影響については、睡眠の断片化を意図的に起こした研究で調べられています。
ヨーロッパで行われたある研究では、20代から40代の健康な成人を対象に、睡眠の断片化を意図的に生じさせる実験が行われました[4]。この研究では、同じ参加者が連続して眠れる条件と、睡眠中に短時間の覚醒を何度かはさんで睡眠を断片化させる条件の両方を、それぞれ3夜連続で経験し、翌日の状態が比較されています。
その結果、実際に眠っていた合計時間はほぼ同じであっても、断片化された睡眠の後では、翌日の注意力を測る課題の成績が下がり、主観的な疲労感も高まりやすい傾向がみられました[4]。ただし、この年齢層では、睡眠が断片化してもすべての認知機能が大きく低下するわけではなく、注意や記憶に関わるいくつかの機能は比較的保たれていました。一方で、反射的な反応を抑えて正しい行動を選ぶ力などの機能には影響がみられました。
比較的少人数を対象とした実験ではありますが、睡眠が途中で途切れず、まとまって眠れることが、翌日の注意力や疲労感に関わっている可能性を示す一例といえます。
一方、日常生活の中で生じる睡眠の断片化が、長期的にどのような影響と関連するかについては、追跡調査による研究が行われています。
アメリカで行われた高齢者を対象とした追跡調査では、日常生活の中で生じる睡眠の断片化と、その後数年間にわたる認知機能の変化との関係が調べられました[5]。
この研究では、活動量計(アクチグラフ)を用いて睡眠の断片化の程度が測定され、その後、長期的に認知機能の変化とアルツハイマー病の発症が追跡調査されました。
その結果、睡眠が細切れになりやすい人ほど、年齢を重ねる中で認知機能の低下が進みやすく、アルツハイマー病を新たに発症するリスクも高い傾向がみられました。実際にこの調査では、睡眠の断片化が特に強い人では、断片化が少ない人と比べて、アルツハイマー病を発症するリスクがおよそ1.5倍高い水準にあることが報告されています[5]。
この結果は、日常的に睡眠が途切れやすい状態が続くことが、長期的な認知機能の変化と関連している可能性を示しています。
こうした短期的・長期的な影響の背景として、睡眠が途切れがちになることで、自律神経のはたらきや炎症反応に変化が生じることが、研究から示唆されています。
睡眠の中断が多い状態では、心拍数や心拍変動など、自律神経の活動を示す指標に変化がみられることが示されています[3]。
また、睡眠時間の不足や睡眠の中断は、炎症に関わる物質であるサイトカインの増加と関連することが指摘されています[2][6]。こうした炎症反応が高まった状態が続くことは、体にとって負担となる可能性があると考えられています。

睡眠の断片化は、加齢とともに生じやすくなることが知られています。年齢を重ねるにつれて夜間の覚醒が増え、睡眠が浅くなる傾向があるためです[2]。
また、睡眠時無呼吸症候群などの睡眠障害では、睡眠中に呼吸が止まったり浅くなったりするたびに、睡眠が何度も中断されることがあります[1]。
さらに、夜間の音や光、不規則な生活リズムといった生活・環境要因も、睡眠が途切れやすくなる一因になることがあります[1]。
これまでの研究から、睡眠の断片化は、短期的には注意力や疲労感と関連し、高齢者を対象とした研究では、長期的には認知機能の低下や認知症リスクとの関連が報告されています。
「眠れているつもりなのに、なんとなく不調が続く」と感じるときには、睡眠の断片化が関係していることもあります。気になる症状が続くときには、専門家に相談してみるのも一つの方法です。
参考文献
[1] Medic G, et al. Short- and long-term health consequences of sleep disruption.
Nat Sci Sleep. 2017;9:151–161. PMID: 28579842 ; PMCID: PMC5449130.
[2] Besedovsky L, et al. The sleep–immune crosstalk in health and disease.
Physiol Rev. 2019;99(3):1325–1380.PMID: 30920354 ; PMCID: PMC6689741.
[3]Castro-Diehl C, et al. Sleep duration and quality in relation to autonomic nervous system measures. Sleep. 2016;39(11):1927–1940. PMID: 27568797 ; PMCID: PMC5070747.
[4] Benkirane O, et al. Impact of Sleep Fragmentation on Cognition and Fatigue.Int J Environ Res Public Health. 2022 ; 19(23):15485. PMID : 36497559 ; PMCID: PMC9740245.
[5]Lim AS, et al. Sleep fragmentation and the risk of incident Alzheimer’s disease and cognitive decline in older persons. Sleep. 2013;36(7):1027–1032. PMID: 23814339 ; PMCID: PMC3669060.
[6] Mullington JM, et al. Sleep loss and inflammation. Best Pract Res Clin Endocrinol Metab. 2010; 24(5):775-784. PMID: 21112025 ; PMCID: PMC3548567