「夜遅くに食事をすると眠りが浅くなる気がする」「夕食が遅い日は寝つきが悪い」
このような体験をしたことがある方は少なくありません。
近年の睡眠研究では、食事内容だけでなく「食事のタイミング」が体内リズムや睡眠と関係する可能性が注目されています。こうした考え方は時間栄養学(クロノニュートリション)と呼ばれ、研究が進められています。
実際に、大規模疫学研究や複数の研究をまとめたレビューでは、食事の時間帯が遅い人ほど、主観的な睡眠の質が低い傾向が報告されています[1][2]。
特に「夕食や最後の食事が遅い」「食事時間が全体的に後ろにずれている」といった生活パターンが、睡眠と関連している可能性が示唆されています。
本記事では、
を、睡眠に悩む方にも理解しやすい形で解説します。
夜遅い食事と睡眠の関係について、比較的多く用いられているのが疫学研究です。
疫学研究とは、多くの人の生活習慣と健康状態を調べ、両者の関連を統計的に分析する研究手法です。
アメリカの国民健康栄養調査(NHANES)のデータを用いた大規模研究では、約7,000人の成人を対象に、食事の開始時間・終了時間・食事の回数と、睡眠の質(PSQI)との関係が分析されています[2]。
その結果、最初の食事や最後の食事の時間が遅い人、1日の食事時間帯全体が後ろにずれている人ほど、主観的な睡眠の質が低い傾向が示されました。
具体的には、
といった食事パターンを持つ人ほど、睡眠の質に関するスコアが高く(=睡眠の質が低い状態)、「眠りにくさ」や「睡眠への満足度の低下」と関連している可能性が示唆されています[2]。
では、なぜ食事のタイミングが睡眠と関係すると考えられているのでしょうか。
時間栄養学の研究では、いくつかの生理学的な仕組みが関係している可能性が指摘されています。
人の体には、約24時間周期で働く体内時計(概日リズム)があります。この体内時計は、光だけでなく、食事のタイミングによっても影響を受けることが分かっています[1]。
特に、食事は肝臓や消化管などの「末梢時計」を動かす重要な刺激となります。
夜遅い時間帯に食事をすると、
といった反応が起こる可能性があります[1]。
これらの変化は、本来「休息モード」に入りたい就寝前の身体にとって、覚醒方向の刺激となることが考えられています。
また、食事と就寝の間隔が短い場合、胃の内容物が残った状態で横になることで、不快感や胃食道逆流症状が生じやすくなり、それが睡眠の質に影響する可能性も指摘されています[1]。

ここまでの研究から、夜遅い食事と睡眠の質には一定の関連が報告されていることが分かります。ただし、これらは主に疫学研究や観察研究に基づく知見であり、すべての人に同じ影響が起こるとは限りません。
重要なのは、「何時までに食べなければならない」と厳密に決めることよりも、
といった生活全体のリズムを見直す視点です。
論文では、食事のタイミングと睡眠の関係は、食事内容、生活習慣、身体活動量、個人の体質など、さまざまな要因が組み合わさって影響するとされています[1]。そのため、夜遅い食事を避けることが、必ずしも睡眠の改善につながると断定することはできませんが、睡眠を意識する上で注目される生活習慣の一つと考えられています。
「最近、寝つきが悪い」「眠りが浅い」と感じる場合、睡眠時間だけでなく、夕食の時間帯や食事と就寝までの間隔にも目を向けてみることが、生活習慣を見直すきっかけになるかもしれません。
参考文献
[1] Saidi O, Rochette E, Dambel L, St-Onge MP, Duché P. Chrono-nutrition and sleep: lessons from the temporal feature of eating patterns in human studies – A systematic scoping review. Sleep Med Rev. 2024 Aug;76:101953. doi: 10.1016/j.smrv.2024.101953. Epub 2024 May 18. PMID: 38788519; PMCID: PMC12090848.
[2] Yan LM, Li HJ, Fan Q, Xue YD, Wang T. Chronobiological perspectives: Association between meal timing and sleep quality. PLoS One. 2024 Aug 1;19(8):e0308172. doi: 10.1371/journal.pone.0308172. PMID: 39088487