睡眠時ブラキシズム(Sleep Bruxism)は、睡眠中の無意識な歯ぎしりや食いしばりのことです。自覚症状がないことも多く見逃されがちな症状ですが、歯や顎へのダメージはもちろん、頭痛や睡眠の質の低下を招きます。
ストレスや緊張といった心理的要因のほか、遺伝や生活習慣も関わっているといわれていますが、近年は栄養素との関係にも注目が集まっています。
今回は、睡眠時ブラキシズムと特定の栄養素との関係に着目した研究や、食事摂取状況を調査し、睡眠時ブラキシズムとの関係を調査した研究に着目し、わかりやすく解説します。
ヨルダンで行われた研究では[1]、睡眠時ブラキシズムがある人とない人各50名の血清中25-OHビタミンD(血液中のビタミンD濃度)と、自己申告による食事からのカルシウム摂取量を比較しました。
その結果、睡眠時ブラキシズムがある人は、血液中のビタミンDの量が少なく、食事からのカルシウム摂取量も低いことが分かりました。


Mohammad J Alkhatatbeh,Zainab L Hmoud et.al.Self-reported sleep bruxism is associated with vitamin D deficiency and low dietary calcium intake: a case-control study.BMC Oral Health. 2021 Jan 7;21:21.をもとに執筆者作成
カルシウムについては、1日あたり600mgより多い量を摂取している人の割合を示しています。厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」における、成人1日あたりのカルシウムの摂取推奨量は600〜800mgです[2]。
さらに、詳しい分析では次のような結果が出ています。
カルシウムは歯や骨の健康を維持するだけでなく、筋肉や神経の正常な働きにも不可欠です。不足すると筋肉が過剰に緊張しやすくなったり、神経が敏感になったりする可能性があるため、無意識のうちに起こる睡眠中の歯ぎしりにも影響を及ぼしやすいと推察されます。
血液中のカルシウムを一定に保つ作用のあるビタミンDの不足も同様に、睡眠時ブラキシズムに影響を与える要素といえるでしょう。

またこの研究では、不安感や気分の落ち込みが睡眠時ブラキシズムのリスク因子とは断定できないものの、精神状態の不安定さがあると歯ぎしりを起こしやすいことも分かりました。カルシウムは神経伝達にも深く関わっていることから、不足すると抑うつの症状が出やすくなることがあります。
睡眠時ブラキシズムと心の状態、カルシウム、ビタミンDが深く関わっている可能性があるという点は、この研究の大きなポイントといえますね。
なおカルシウムと密接に関係して働くマグネシウムの不足も、歯ぎしりと関与しているという報告もあります[3]。マグネシウムも、筋肉の正常な働きや神経伝達をサポートする重要なミネラルです。カルシウムやビタミンDと同じように、歯ぎしりの発症に関わる可能性が示唆されています。
日本で行われた大学生143名を対象とした研究において、食事から摂取する栄養素と睡眠時ブラキシズムの関係を調べたところ、歯ぎしりがある人は、ない人に比べて食物繊維の摂取量が少ないことがわかりました[4]。
食物繊維は水に溶けやすい「水溶性食物繊維」と溶けにくい「不溶性食物繊維」があります。この研究ではどちらの食物繊維も腸内環境の改善に関与し、睡眠の質を高めることで睡眠時ブラキシズムの改善が期待できる可能性があると述べています。

食物繊維は、人間の消化酵素で消化されずに大腸まで届き、腸内環境を整えて便通をよくしたり血糖値の急上昇を抑えたりする作用がある成分です。そのほか脳の機能や睡眠にも関係しているとされ、特に深い眠りを増やし浅い眠りを減らす働きがある可能性が報告されています[5]。
睡眠時ブラキシズムが出やすいのは、眠りが浅くなったタイミング(短い覚醒が起こったとき)といわれています。そのため、睡眠の質を高める食物繊維は間接的に睡眠時ブラキシズムの予防や軽減につながるかもしれません。
腸内環境と睡眠の関係について、詳しくはこちらの記事で解説しています。
研究結果をふまえて、ご自身が毎日の生活でできる工夫をご紹介します。【徹底解説】睡眠中の歯ぎしり(睡眠時ブラキシズム)〈1〉生活習慣・遺伝との関連性の内容もぜひご覧いただき、日常生活のなかで意識してみてくださいね。
ビタミンDはサケ・イワシなどの魚類、きのこ類食品から摂取できるほか、日光を浴びることで皮膚で生成されます。しかし、日光(紫外線)は皮膚がんやシミ・しわ原因となることから、長時間浴びることは推奨できません。地域や時間帯、皮膚の露出具合によっても異なりますが、関東地方であれば夏で5〜10分、冬で15〜30分程度がおすすめです[6]。
カルシウムは乳製品や小魚類、青菜類から摂取可能です。食品から摂取しづらい場合はサプリメントの活用も一つの方法ですが、1日あたりの摂取量を守り過剰摂取に注意しましょう。
野菜や果物、豆類、海藻類、きのこ類のほか、玄米や胚芽米、雑穀ごはんなどを食事に積極的に取り入れることで、食物繊維の摂取量を増やせます。できるだけ多くの食材から摂取することで、不溶性食物繊維と水溶性食物繊維をバランスよく摂取できるでしょう。
忙しい日は冷凍野菜やカット野菜を活用したり、手軽に食べられる果物を取り入れたりするのもおすすめです。
マグネシウムは、カルシウムと互いに影響し合いながら働くことで、筋肉の収縮と弛緩をスムーズにする役割のあるミネラルです。不足すると神経系が過敏になったり、筋肉がこわばりやすくなったりすることから、歯ぎしりにつながる可能性があるといわれています。
マグネシウムは海藻類や豆類、緑黄色野菜、未精製の穀物(玄米や全粒粉)、ナッツ、ほうれん草などに多く含まれています。カルシウムとマグネシウムの摂取比率は「2:1」が理想とされているため、バランスよく摂取することが大切です。

今後のさらなる研究が期待されますが、睡眠時ブラキシズムの発症には、遺伝や生活習慣の問題だけでなくビタミンDやカルシウム、食物繊維の摂取不足と関わっている可能性があります。
日々の食事と生活習慣を少し見直すことで、症状の軽減や予防につながるかもしれません。
ただし、これらの栄養素とブラキシズムの関係は完全に解明されてはいません。症状が気になる場合は、ぜひ当院にご相談ください。無理なく続けられる方法を見つけていくことが大切です。
[1] Mohammad J Alkhatatbeh,Zainab L Hmoud et.al.Self-reported sleep bruxism is associated with vitamin D deficiency and low dietary calcium intake: a case-control study.BMC Oral Health. 2021 Jan 7;21:21.
[2] Ioannis A Pavlou,Demetrios A Spandidos et.al.Nutrient insufficiencies and deficiencies involved in the pathogenesis of bruxism (Review).Exp Ther Med. 2023 Oct 19;26(6):563
[3]厚生労働省 日本人の食事摂取基準(2025年版)
[4] Naoki Toyama,Daisuke Ekuni et.al.Nutrients Associated with Sleep Bruxism.J Clin Med. 2023 Mar 31;12(7):2623.
[5] Fiber and Saturated Fat Are Associated with Sleep Arousals and Slow Wave Sleep. Journal of Clinical Sleep.Medicine.Journal of Clinical Sleep Medicine(2016)Volume 12, Issue 01
[6] 国立環境研究所 地域環境研究センター ビタミンD生成・紅斑紫外線量情報