家族に「寝ているときに歯ぎしりをしている」と言われた。
そんな経験はありませんか?
睡眠時に無意識で行われる歯ぎしり(睡眠時ブラキシズム)は、歯や顎関節への負担だけでなく、睡眠の質にも影響を与えることがあります。
今回は、睡眠に関連する運動障害の一種とされる睡眠ブラキシズムと生活習慣との関連について解説します。
睡眠時ブラキシズム(Sleep Bruxism)とは、睡眠中に無意識に行われる歯ぎしりや食いしばりのことです。一般的には、本人に「寝ている間に歯ぎしりをしている」という自覚がないケースも多いのですが、放置していると以下のような症状が現れることがあります。
海外の研究によると、睡眠時ブラキシズムは成人の約10〜16%に認められると報告されています[1]。

睡眠時ブラキシズムはストレスや緊張といった心理的要因が関与することもありますが、日々の生活習慣も影響することがわかっています。なかでも影響を与えている可能性が示唆されているのが、アルコールやカフェインの摂取、喫煙習慣などです[2] 。
ここからは、それぞれの要因について詳しく見ていきましょう。
最近の研究では、アルコールと睡眠時ブラキシズムとの関係についての最近の研究には、以下のようなものがあります。
2016年にシステマティックレビューと呼ばれる体系的に複数の研究を統合した報告では、7つの研究(対象者は51人~10,229人とばらつきがある)が評価され、アルコール摂取をしている人では、睡眠中のブラキシズム(歯ぎしり)が2倍多いという結果でした[3]。最近の研究でも、2024年のブラジルでの研究(対象42人)では、飲酒者は非飲酒者よりも睡眠時ブラキシズムの発症リスクが約6倍高いという結果が出ました[4]。
現時点のエビデンスでは、アルコール摂取は睡眠時ブラキシズム発症リスクを増やすと考えられています。
もちろん、アルコールの過剰摂取は睡眠の質全般に悪影響を及ぼすため、歯ぎしりの有無に関わらず控えることがおすすめです。

成人106名を対象に行われたポリソムノグラフィ(PSG)試験では、コーヒーを飲む人は飲まない人に比べて歯ぎしりの強さが有意に強いことがわかりました。この研究では「コーヒーの習慣的な摂取は睡眠の断片化(細切れ睡眠)には関与しないが、睡眠時ブラキシズムの強度を高めるリスクファクターとなり得る」という結果が出ています[5] 。
カフェインは交感神経を刺激することで覚醒作用をもたらす成分です。日中の摂取は集中力を高めうる一方で、夕方以降の摂取は睡眠の質を低下させるといわれています。そのため、安定した睡眠のためには、コーヒーも紅茶も飲み過ぎには注意すべきといえるでしょう。

喫煙と睡眠時ブラキシズムとの関連も示唆されています。タバコに含まれるニコチンの作用により、眠りが浅くなることで睡眠時の歯ぎしりが誘発されると考えられています。
2022年のヴロツワフ医科大学での試験(成人133人を対象としたPSG検査)では[6]、アルコールのほか喫煙との関連性についても調査が行われました。その結果、喫煙者は非喫煙者に比べて、ブラキシズムの強度が高いことが報告されています。特にノンレム睡眠の浅い段階(N1)や、仰向け以外の姿勢でその傾向が強いほか、睡眠の断片化(細切れ睡眠)も示されました。

引用: Weronika Frosztega, Mieszko Wieckiewicz, et al.(2022)Polysomnographic Assessment of Effects of Tobacco Smoking and Alcohol Consumption on Sleep Bruxism Intensity. J Clin Med.11(24):7453.
日本の18~19歳の大学生1,781名(男女比:約55:45)を対象に行われた調査によると、受動喫煙にさらされた若年女性において睡眠の質の低下が認められ、睡眠の質が悪いほど睡眠時ブラキシズムの有病率も高かったと報告されています[7]。睡眠時の歯ぎしりの要因として、周りにタバコを吸っている人がいるかどうかも関わっていると考えられます。
睡眠時ブラキシズムは、遺伝的要因の関与も示唆されています。Khouryら(2016)の研究(対象者6,357名:オンライン調査)によると、睡眠時ブラキシズムと診断されている人が家族(両親、きょうだい、子ども)に睡眠時ブラキシズムを持つ確率は、家族にブラキシズムと診断されている人がいない場合より2.5倍高いことがわかりました。
また、ポリソムノグラフィ(PSG)検査による検査では(被験者111名)、睡眠時ブラキシズムと診断された人が家族に睡眠時ブラキシズムを持つ割合は、家族にブラキシズムと診断されている人がいない場合より約4.6倍高いという結果も報告されています[8]。
睡眠時ブラキシズムは、無意識のうちに起こるため見過ごされがちですが、放っておくと歯や顎へのダメージ、さらには睡眠障害にもつながる可能性があります。
ストレスや緊張などが関与している一方でアルコール、カフェイン、喫煙、遺伝的背景など、さまざまな要素が関与していることもわかってきました。
抱えている不眠の原因が、睡眠中の歯ぎしりによるものである可能性もあります。気になる症状や思い当たる節がある方は、ぜひ当院へご相談ください。
[1] Manfredini D, Winocur E, Guarda-Nardini L, Paesani D, Lobbezoo F (2013) Epidemiology of bruxism in adults: a systematic review of literature. J Orofac Pain 27: 99-110.
[2] Melo G, Duarte J, Pauletto P, Porporatti A, Stuginski-Barbosa J, et al. (2019) Bruxism: An umbrella review of systematic reviews. J Oral Rehabil 46: 666-690.
[3] Bertazzo-Silveira, E., Kruger, C. M., et al. Association between sleep bruxism and alcohol, caffeine, tobacco, and drug abuse: A systematic review. Journal of the American Dental Association (2016), 147(11), 859–866.e4.
[4] Jéssica Conti Réus, Joyce Duarte,et al.(2024)Associations between sleep bruxism and primary headaches: a descriptive study.Journal of Oral & Facial Pain and Headache.Vol.38,Issue4:52–60.
[5] Weronika Frosztega,Mieszko Wieckiewicz, et al.(2023)The effect of coffee and black tea consumption on sleep bruxism intensity based on polysomnographic examination.Heliyon.Volume 9, Issue 5, e16212
[6] Weronika Frosztega, Mieszko Wieckiewicz, et al.(2022)Polysomnographic Assessment of Effects of Tobacco Smoking and Alcohol Consumption on Sleep Bruxism Intensity. J Clin Med.11(24):7453.
[7] Naoki Toyama,Daisuke Ekuni,et al.(2020)Associations between sleep bruxism, sleep quality, and exposure to secondhand smoke in Japanese young adults: a cross-sectional study.Sleep Medicine Volume 68, 57-62
[8] Samar Khoury, Maria Clotilde Carra,et al.(2016)Sleep Bruxism-Tooth Grinding Prevalence, Characteristics and Familial Aggregation: A Large Cross-Sectional Survey and Polysomnographic Validation.Sleep. 2016,39(11):2049–2056.