睡眠不足は子どもの脳にどんな影響がある? 最新研究が示す「睡眠の質」と環境ストレス(空気汚染)との関係

「子どもは多少寝不足でも大丈夫」と思っていませんか。

実は近年、睡眠の量や質が、子どもの脳の発達と深く関係している可能性が、脳画像研究などから示されつつあります。

さらに最新の研究では、空気汚染(大気汚染)という“環境ストレス”が子どもの脳に与える影響が、睡眠の状態によって異なる可能性も報告されました。

これは、「環境は変えにくくても、睡眠は見直せるかもしれない」という重要な可能性を意味しています。

本記事では、米国の大規模研究をもとに、

  • 睡眠不足や睡眠の質は、子どもの脳にどのように関係するのか
  • 空気汚染と脳発達の関係
  • 睡眠が果たす可能性のある役割

について、一般の方にもわかりやすく解説します。


睡眠不足や睡眠の質は、子どもの脳とどう関係するのか

子どもの睡眠は、単に「体を休める時間」ではなく、脳の発達や調整に深く関わる時間と考えられています。

睡眠中には情報処理、免疫機能の調整などが進むことが知られており、成長期にある子どもでは特に重要です。

近年の研究では、睡眠時間が短い、あるいは眠りが浅く途中で目覚めやすい状態が続くと、情緒面や注意力、学習面に影響が出る可能性が指摘されています。

ただし、こうした影響は個人差が大きく、「睡眠不足=必ず脳に悪影響が出る」と断定できるものではありません

重要なのは、睡眠が「脳にとっての回復・調整の時間」であり、睡眠の量だけでなく睡眠の質(眠っている間にどれだけ効率よく休めているか)も注目されている点です。


子どもの脳に影響する「環境ストレス」とは?空気汚染の視点から

子どもの脳発達に影響を与える要因は、生活習慣だけではありません。

近年注目されているのが、空気汚染(大気汚染)という環境ストレスです。

自動車の排気ガスなどに含まれる二酸化窒素(NO₂)や、光化学反応で生じるオゾン(O₃)、微小粒子状物質(PM2.5)などは、呼吸器だけでなく、体内の炎症反応や酸化ストレスを引き起こす可能性があるとされています。

これらは血液を介して全身に影響を及ぼし、脳の発達過程にも関与する可能性が指摘されています。

特に子どもは、大人に比べて呼吸量が多く、脳が発達途中にあるため、環境の影響を受けやすいと考えられています。


最新研究が示した「睡眠の量・質」と空気汚染、脳発達の関係

こうした背景のもと、2025年に発表された米国の大規模研究では、子どもの睡眠と空気汚染、脳の構造との関連が詳しく調べられました[1]。

この研究では、約2,000人以上の10〜13歳の子どもを対象に、

  • 妊娠中および学童期の空気汚染物質への曝露
  • 睡眠時間と睡眠効率
  • MRIによる脳の白質(情報伝達を担う神経線維)の微細構造

を解析しています。

睡眠時間とNO₂の関係(図1)

研究の結果、学童期にNO₂への曝露があった子どもでも、睡眠時間が比較的長い場合には、脳白質への影響の出方が異なっていたことが報告されました[1]。

睡眠時間が短い場合と比べ、睡眠が十分に確保されている子どもでは、脳構造の変化が小さい傾向がみられたとされています。

学童期に空気中の二酸化窒素にさらされていた場合でも、子どもの睡眠時間によって、脳の構造との関係の現れ方が異なっていました

特に、睡眠時間が長い場合には、その関連が目立たなくなる傾向がみられました。


この研究から保護者が知っておきたい現実的なポイント

この研究は、「睡眠をとれば環境汚染の影響を防げる」と示しているわけではありません。

しかし、睡眠が子どもの脳にとって重要な調整要因である可能性を示した点は、保護者にとって大切な視点といえます。

空気汚染は個人で完全に避けることが難しい一方、睡眠習慣は家庭で見直しやすい要素です。

・十分な時間眠れているか(未就学児であれば11時間以上が目安)

・就寝時刻が大きく乱れていないか

・夜中に何度も目覚めていないか

・朝起きたときに強い眠気が残っていないか

こうした点を確認することは、子どもの健康全体を考えるうえで大変有意義です。

また、睡眠不足や日中の強い眠気、集中力低下などが続く場合には、生活リズムの調整だけでなく、医療機関での相談が必要になることもあります


まとめ

最新の研究から、睡眠の量や質が、空気汚染という環境ストレスと子どもの脳発達との関係に関わっている可能性が示されました。

ただし、これは因果関係を示すものではなく、あくまで「関連がみられた」という段階です。

それでも、睡眠が子どもの脳にとって重要な役割を果たしていることは、多くの研究から一貫して示されています。

日常生活の中で睡眠環境を整えることは、子どもの健やかな成長を支える一つの土台になるかもしれません。


参考文献

[1]Cotter DL, Kiss O, Ahmadi H, de Jesus AV, Schwartz J, Baker FC, Hackman DA, Herting MM. Sleep moderates how prenatal and childhood pollutant exposure impacts white matter microstructural integrity in adolescence. NPJ Biol Timing Sleep. 2025;2(1):38. doi: 10.1038/s44323-025-00050-4. Epub 2025 Nov 4. PMID: 41200074; PMCID: PMC12586141.