徹夜や短時間睡眠は“飲酒運転並み”のリスク

一晩中起きていたり、睡眠が短かったりすると、脳は“飲酒運転の時”と同じように鈍ってしまいます。

「昨日はほとんど寝ていないけど、気合で頑張ろう」──── そんな経験、誰にでもあるでしょう。

しかし研究は、睡眠不足が単なる「眠い」で済まない重大なリスクを抱えていることを示しています。徹夜すればたくさん飲酒した後と同じほど脳の働きが鈍り、眠りが足りないことで事故率が高まるのです。

徹夜は”酒気帯び運転”以上のリスクになる

健康な成人に起床から最大28時間起きたまま、つまり丸一日以上の“徹夜状態”で過ごしてもらい、その間に以下の能力について繰り返しテストを行う実験が行われました[1]。

  • 反応速度(単純反応や複数刺激に対する選択反応)
  • 追跡課題(動く対象を追いかける)
  • 計算能力
  • 論理的推論
  • 短期記憶

その結果、徹夜明けには、十分に睡眠をとった直後と比べて 反応速度が最大50%遅くなり、複雑な課題(選択反応・計算・論理的推論など)での誤答の増加が目立ちました。
「眠いけど何とか頑張れる」と思っていても、脳の働きは明らかに落ちているのです。

さらに研究者は、この成績をアルコール摂取時のデータ(BAC=血中アルコール濃度)と比較しました。

  • 起床後17〜19時間:多くのテスト項目が BAC 0.05% に相当(日本では 0.03%以上で酒気帯び運転、他の多くの国でも基準超過)
  • さらに長時間の覚醒(実験では起床後28時間まで観察):反応速度や追跡課題など一部のテスト項目が BAC 0.1% に相当(強い酔いの状態)

つまり、私たちが「眠いけどまだ頑張れる」と思っている徹夜や、それに近い状態は、実際には脳を飲酒後と同じように鈍らせ、安全性を脅かしているのです。

現実社会に表れる“事故リスク”

アメリカで行われた大規模調査では、40〜89歳の男女3,201名を対象に、睡眠時間や睡眠障害と、その後に起きた運転による交通事故リスクとの関連が分析されました[2]。

結果として、次のような関連が明らかになりました。

  • 過度の眠気を自覚している人 → 事故リスクが有意に高まっていた
  • 重度の睡眠時無呼吸 → 睡眠時無呼吸がない場合に比べて、事故リスクが約2.2倍(123%増加)
  • 睡眠6時間未満 → 7〜8時間の人と比べて 1.3倍(33%増加)
  • 睡眠4時間未満 → 7〜8時間の人と比べて 2.4

さらに解析では、睡眠が1時間短くなるごとに事故リスクは平均して13%ずつ増加することが示されました。ただしこの傾向は直線的ではなく、極端に短い睡眠(4時間未満)ではリスクが急激に高まることがわかっています。

また興味深いことに、眠気を感じていない人に限っても、睡眠が1時間短くなるごとに事故リスクは22%増加しており、「眠くないから大丈夫」という思い込みは危険であることが明らかになりました。

この研究では、社会全体で見た場合に交通事故のおよそ1割が睡眠不足や睡眠障害に起因すると推定されています(睡眠時無呼吸:10%、睡眠時間6時間未満:9%、※両者は重なるため単純に合計はできません)。

つまり、「徹夜ほど極端でなくても」「眠気を感じていなくても」、短い睡眠や睡眠障害は運転事故のリスクを押し上げる要因になるのです。


「眠気をがまんして頑張る」「少しくらい大丈夫」という考えは、自分にも周囲にも危険を及ぼすかもしれません。日常の交通安全のためにも、まずは十分な睡眠を意識することが大切です。心配なときには、専門のクリニックへの相談も考えてみるとよいでしょう。

参考文献

 [1]  Williamson AM, Feyer AM. Moderate sleep deprivation produces impairments in cognitive and motor performance equivalent to legally prescribed levels of alcohol intoxication. Occup Environ Med. 2000;57(10):649–55. PMID: 10984335; PMCID: PMC1739867

[2] Gottlieb DJ, Ellenbogen JM, Bianchi MT, Czeisler CA. Sleep deficiency and motor vehicle crash risk in the general population: a prospective cohort study. Sleep. 2018;41(10):zsy144. PMID: 29733370; PMCID: PMC6156407