こんにちは。睡眠プライマリケアクリニックです。
「午後の勉強中、どうしても眠くて集中できない…」
「うとうとしてしまい、気づけば時間が過ぎている…」
受験生や資格勉強中の社会人の方で、このような悩みを抱えている方は多いのではないでしょうか。
まず大前提としてお伝えしたいのは、「日中に強い眠気が出るということは、夜間の睡眠が不足しているか、睡眠の質が悪い可能性が高い」ということです。本来、夜に十分な睡眠がとれていれば、日中に勉強が手につかなくなるほどの眠気は生じないはずです。
ですので、最も根本的な解決策は「夜の睡眠時間を確保すること」に尽きます。
しかし、試験直前などでどうしても睡眠時間が削れてしまったり、一時的なコンディション不良で眠気に襲われたりすることもあるでしょう。そんな時、無理に起き続けてパフォーマンスを下げるよりは、短時間の仮眠を戦略的に取り入れることで、一時的に脳の機能を回復させられることが研究で分かっています。
今回は、2021年の研究データを参考にしつつ、夜の睡眠を妨げないための「緊急避難としての仮眠法」について解説します。

2021年に発表された、昼寝と認知機能に関する複数の研究を統合・解析したシステマティックレビュー(メタアナリシス)によると、短時間の仮眠は、午後の認知パフォーマンス(覚醒度や反応速度など)を有意に向上させることが報告されています[1]。
この研究では、短時間の仮眠をとることで、眠気が覚め、論理的思考能力や作業スピードが改善する傾向が見られました。
つまり、眠気と戦いながらダラダラと勉強を続けるよりは、一度短時間眠ってリセットした方が、その直後の学習効率は高まると考えられます。
ただし、仮眠には大きな落とし穴があります。それは寝すぎです。 先ほどの研究および一般的な睡眠医学の知見において、30分以上の仮眠は推奨されていません。
その理由は、「睡眠慣性」と呼ばれる現象にあります[2]。
人間は入眠から30分ほど経過すると、脳が休息モードである「深い睡眠(徐波睡眠)」に入り始めます。この深い睡眠に入ってから無理やり起きようとすると、脳が覚醒モードに切り替わらず、起きた後に強い倦怠感や、頭が働かない状態が続いてしまいます。これでは勉強どころではありません。
さらに深刻なのが、夜への悪影響です。昼間に深く寝てしまうと、睡眠圧(眠りたいという欲求)が解消されすぎてしまい、「夜なかなか寝付けない」「夜の眠りが浅くなる」という悪循環に陥ってしまいます。これでは本末転倒です。
仮眠の時間によって、その後のパフォーマンスや夜の睡眠にどのような影響が出るのかをまとめました。
| 仮眠時間 | 評価 | 解説 |
|---|---|---|
| 15〜20分 |
○ 緊急対策として有効 |
深い睡眠に入らず脳の疲労だけがとれるため、直後の頭がスッキリしやすい。夜の睡眠への影響も最小限に抑えられる。 |
| 30分以上 |
× 推奨しない |
【睡眠慣性】 深い睡眠に入りかけるため、起きた後に強いダルさが残り、勉強に集中できなくなるリスクが高い。 |
| 60分以上 |
× 推奨しない |
【生活リズムの乱れ】 睡眠欲求が減ってしまい、夜の入眠を妨げる原因になる。最も避けるべきパターン。 |
※Dutheil et al. (2021)[1]および一般的な睡眠医学の知見[2]に基づき作成
本来は夜しっかり寝るべきですが、どうしても眠気が限界で勉強が進まない場合は、以下のルールを守って仮眠をとりましょう。
スマートフォンのアラームなどを必ずセットしてください。「もう少し寝たい」と思っても、それ以上寝ると逆効果になります
夕方以降に寝てしまうと、夜の睡眠に確実に影響が出ます。夕方に眠くなった場合は、立ち上がって運動するなどして気を紛らわせ、その分夜早く寝るようにしましょう。
ベッドやソファで横になると、体がリラックスしすぎて深い睡眠に入りやすくなります。机に伏せる、椅子に座ったまま目をつぶる程度に留めましょう。

勉強の効率を上げるために最も大切なのは、「毎日決まった時間に十分な睡眠をとること」です。
しかし、どうしても日中に耐え難い眠気が出た場合は、「20分以内の仮眠」を緊急措置として活用してください。長時間の仮眠は、その後の集中力を下げ、夜の睡眠リズムを崩す原因となりますので避けましょう。
もし、「夜に十分な時間(7時間以上など)寝ているのに、日中どうしても眠くて仕方がない」「仮眠をとっても眠気が取れない」という場合は、睡眠時無呼吸症候群や過眠症などの病気が隠れている可能性があります。その場合は、一人で悩まずに睡眠専門のクリニックにご相談ください。
[1]Dutheil, F., et al. (2021). Effects of a Short Daytime Nap on the Cognitive Performance: A Systematic Review and Meta-Analysis. International Journal of Environmental Research and Public Health, 18(19), 10212.
[2]Tassi, P., & Muzet, A. (2000). Sleep inertia. Sleep medicine reviews, 4(4), 341-353.