こんにちは。睡眠プライマリケアクリニックです。
「睡眠不足の翌朝、鏡を見て肌の調子が悪くてがっかりした…」
「しっかり寝た日と比べて、肌が乾燥したり、くすんで見えたりする」
このような経験は、多くの方がお持ちではないでしょうか。昔から「美肌は夜つくられる」と言われますが、これは単なる言い伝えではありません。睡眠不足が肌に悪影響を与えることは、科学的にも証明されています。
今回は、健康な女性を対象に行われた「一晩の睡眠不足が肌にどのような影響を与えるか」を具体的に調査した研究[1]を基に、睡眠と美肌の密接な関係を分かりやすく解説していきます。

まず、睡眠不足が肌に与える短期的な影響を見てみましょう。
とある健康な女性24名を対象にした研究[1]では、普段通りの睡眠(8時間以上)をとった後と、一晩眠らずに過ごした後の肌状態を専用の機器で比較しました。
その結果、たった一晩眠らなかっただけで、肌の水分量、弾力性(ハリ)、透明感、明るさなどが著しく低下することが明らかになったのです[1]。
| 測定項目 | 正常な睡眠の後 | 一晩の睡眠不足の後 | 変化 |
|---|---|---|---|
| 頬の水分量 (a.u.) 数値が高いほど潤っている |
65.53 | 62.00 | 減少 (乾燥) [1] |
| 経皮水分蒸散量 (TEWL) 数値が高いほど水分が逃げやすい |
22.97 | 23.79 | 増加 (バリア機能低下) [1] |
| 頬の弾力性 (a.u.) 数値が高いほどハリがある |
0.343 | 0.322 | 低下 (ハリ低下) [1] |
| 頬の明るさ (L*値) 数値が高いほど明るい |
70.72 | 70.00 | 低下 (くすみ) [1] |
※ 論文[1]のTable 2のデータに基づき、頬の測定値を抜粋して作成。
では、なぜこのような変化が起こるのでしょうか。その背景には、「ホルモン」と「肌の体内時計」が深く関わっています。
睡眠は、肌の健康を左右するホルモンの分泌をコントロールする重要な役割を担っています。
睡眠不足は身体にとって大きなストレスです。
ストレスを感じると、私たちの体は対抗するために「コルチゾール」というホルモンを分泌します。
コルチゾールには、肌のハリを保つコラーゲンを分解し、肌のバリア機能を低下させる作用があります。
慢性的な睡眠不足によってコルチゾールが高い状態が続くと、肌の弾力が失われてシワやたるみの原因になったり、外部からの刺激に弱い敏感な肌状態を招いたりするのです[2]。
一方、睡眠中、特に眠り始めの深いノンレム睡眠の時には、「成長ホルモン」が盛んに分泌されます。
成長ホルモンは、日中に紫外線などで傷ついた細胞の修復を促したり、肌の水分量を保ったり、新しい細胞への生まれ変わり(ターンオーバー)を正常に保つ働きをしたりと、まさに「天然の美容液」のような役割を果たします。
質の良い睡眠がとれていないと、この成長ホルモンの分泌が妨げられ、肌の修復が十分に行われず、乾燥やくすみ、肌荒れなどのトラブルにつながってしまうのです[3]。

私たちの身体に「体内時計(サーカディアンリズム)」があり、約24時間周期で体温やホルモン分泌などを調節していることはよく知られています。
実は、皮膚の細胞一つひとつにも独自の体内時計(皮膚サーカディアンリズム)が存在し、時間帯によって働きを変えていることが分かっています[4]。
睡眠不足や不規則な生活によって身体全体の体内時計が乱れると、この皮膚の体内時計も狂ってしまいます。その結果、夜になっても肌が「修復・再生モード」にうまく切り替われず、日中のダメージが蓄積し、肌の老化を早める一因となるのです。
ここまで見てきたように、睡眠不足は肌に多角的なダメージを与えます。
短期的には、乾燥、ハリ低下、くすみ、毛穴の目立ちなどを引き起こします[1]。
長期的には、ホルモンバランスの乱れ[2, 3]や皮膚の体内時計の乱れ[4]を招き、肌の老化を加速させてしまいます。
高価な化粧品を使うことも大切ですが、その効果を最大限に引き出すためには、肌の土台が健康であることが不可欠です。そして、その土台を支える最も重要な習慣こそが「質の良い睡眠」なのです。
もしあなたが、「寝つきが悪い」「夜中に何度も目が覚める」「朝スッキリ起きられない」といった睡眠に関するお悩みを抱えているなら、それは健やかな肌を遠ざけているサインかもしれません。
当クリニックでは、専門的な観点から皆様一人ひとりの睡眠の問題を診断し、改善のサポートを行っています。
ぜひ一度ご相談ください。
[1] Kim, M.A., Kim, E.J., Kang, B.Y. and Lee, H.K. (2017) The Effects of Sleep Deprivation on the Biophysical Properties of Facial Skin. Journal of Cosmetics, Dermatological Sciences and Applications, 7, 34-47.
[2] Chen, Y., & Lyga, J. (2014). Brain-skin connection: stress, inflammation and skin aging. Inflammation & allergy drug targets, 13(3), 177–190.
[3] Van Cauter, E., Latta, F., Nedeltcheva, A., et al. (2004). The role of slow wave sleep in growth hormone secretion. Trends in Endocrinology & Metabolism, 15(5), 204.
[4] Lyons, A. B., Moy, L., Moy, R., & Tung, R. (2019). Circadian Rhythm and the Skin: A Review of the Literature. The Journal of clinical and aesthetic dermatology, 12(9), 42–45.