在宅勤務が広がる中で、「通勤がなくなって以前より長く眠れるようになった」と感じる方もいるかもしれません。では、実際に在宅勤務では睡眠はどのように変化するのでしょうか。

日本の企業23社に勤務するフルタイム事務職3359人を対象とした研究では、在宅勤務の頻度と、睡眠やストレス反応、仕事の生産性との関連が調査されました[1]。その結果、在宅勤務を行っている人では、平日の睡眠時間が長い傾向がみられました。
通勤は、起床時刻を早める大きな要因の一つです。朝早く起きて通勤する生活では、十分な睡眠時間を確保しにくい人も少なくありません。在宅勤務では通勤時間が不要になるため、その分、睡眠時間を確保しやすくなった可能性が考えられます。
しかし、在宅勤務による睡眠への影響は、単純に「睡眠時間が増えて良くなった」だけではありません。同じ研究では、在宅勤務の頻度が高いほど、起床時刻が遅くなる傾向も報告されています。
さらに解析では、睡眠時間が延びることは睡眠の乱れの改善につながる可能性がある一方、起床時刻が遅くなることは睡眠を乱す可能性が示されました。このように、睡眠の乱れを改善する方向と悪化させる方向という相反する作用がみられ、全体平均では、それらが打ち消し合う結果となりました。

この研究では、在宅勤務による睡眠の変化が、心身のストレス反応や仕事のパフォーマンスとも関連していました[1]。
解析では、睡眠の乱れの変化が心身のストレス反応と関連しており、さらに、心身のストレス反応がプレゼンティーズム(出勤していても、本来のパフォーマンスを十分に発揮できていない状態)とも関連している可能性が示されました。
このように、在宅勤務では、単に睡眠時間が増えたかどうかだけではなく、睡眠リズムや睡眠の乱れがどのように変化したかも、心身の状態やプレゼンティーズムに関係する可能性があると考えられます。
では、在宅勤務では、どのような生活習慣が睡眠リズムに関係するのでしょうか。
生活習慣の中でも、光の浴び方は睡眠リズムと深く関係しており、朝の光や夜間の電子機器からの光は、睡眠リズムに影響することが知られています。
この研究では、朝の光や夜間の電子機器使用と、睡眠リズムとの関連も調査されました[1]。
まず、朝の光は、体内時計を整える重要な役割を持っています。通勤は、一日の中で朝に屋外の光を浴びる最初の機会にもなっています。一方、在宅勤務では毎日通勤する必要がなくなるため、朝の光を浴びる機会が減ることがあります。こうした変化が睡眠リズムに影響する場合があります。朝の光を確保できていた人では、睡眠リズムの後退やプレゼンティーズムの悪化が少ない傾向も報告されています。
また、夜間の電子機器使用で強い光を浴びることは、睡眠リズムの乱れにつながる可能性があります。夜にベッドで電子機器を使用しない人では、睡眠の乱れやストレス反応の悪化が少ない傾向もみられました。
さらに、週5日のフルリモート勤務では、睡眠リズムの後退がより目立つ傾向も報告されています。
このように、在宅勤務では、睡眠時間を確保すること、睡眠リズムや睡眠の乱れにも目を向けることに加えて、光環境や夜間の電子機器の使用などの睡眠衛生にも注意することが重要と考えられています。
また、日本の企業で出勤と在宅勤務を組み合わせた働き方をしている1789人を対象とした研究で、「telework jetlag(テレワーク・ジェットラグ)」という概念も報告されています[2]。これは、在宅勤務日と出勤日で睡眠リズムが大きな違いれてしまう状態を指します。
例えば、在宅勤務の日は遅く起き、出勤の日だけ早起きする生活では、勤務日によって睡眠・覚醒リズムが変化しやすくなります。この研究では、テレワーク・ジェットラグが1時間以上ある人では、1時間未満の人と比べて、心理的ストレスが高い傾向が報告されています。
そのため、在宅勤務か出勤かにかかわらず、日頃から無理のない生活スケジュールを心がけ、十分な睡眠時間を確保することが大切と考えられます。

在宅勤務では、通勤時間が減ることで睡眠時間を確保しやすくなる一方、睡眠・覚醒リズムや睡眠習慣が変化することもあります。こうした睡眠の変化は、心身の状態やプレゼンティーズムにも関係しうることが示されています。
さらに、朝の光を浴びることや、夜間の電子機器使用に気をつけることも、健康的で生産性の高い在宅勤務を維持するうえで重要と考えられています。
なお、この研究[1]は質問票を用いた自己記入式調査であり、在宅勤務と睡眠との因果関係を直接示すものではありません。また、参加者の多くは都市部のフルタイム事務職であり、すべての働き方にそのまま当てはまるとは限りません。
在宅勤務で日中のパフォーマンス低下や生活リズムの乱れが気になる場合には、睡眠リズムや睡眠習慣の問題が関係していることもあります。気になる症状が続く場合は、一度当院までご相談ください。
参考文献
[1] Shimura A,et al. The way to healthy telework: Sleep and sleep rhythm changes as the key factors for maintaining mental health and work productivity. Chronobiol Int. 2026 Mar 3:1-12. doi:10.1080/07420528.2026.2636741. PMID:41773618.
[2] Matsumoto Y,et al. Relationship between Telework Jetlag and Perceived Psychological Distress among Japanese Hybrid Workers. Clocks Sleep. 2023;5(4):604–614. PMID:37873841 ; PMCID:PMC10667991.