閉塞性睡眠時無呼吸に対するマウスピース治療とは?特徴やCPAPとの違いについて

閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)は、いびきや睡眠中の無呼吸、日中の強い眠気などをきっかけに見つかることが多い病気です。

治療としてはCPAP(持続陽圧呼吸療法)が広く知られていますが、それ以外にも治療の選択肢があります。その一つが、マウスピース治療(口腔内装置:oral appliance, OA)です。

マウスピース治療とは

マウスピース治療は、就寝時に口の中に装着する装置を用いた治療です。下あごを前方に保つことで気道を確保し、睡眠中に気道が狭くなるのを防ぎます[1]。

閉塞性睡眠時無呼吸では、眠っている間に気道が狭くなり、呼吸が止まったり浅くなったりします。マウスピースにより気道が保たれることで、無呼吸や低呼吸の改善が期待されます。この装置は歯に装着して使用するため、歯科で歯型に合わせて作製されることが一般的です[2]。

マウスピースにはどのような種類があるのか

閉塞性睡眠時無呼吸に用いられるマウスピースには、上下が一体となった上下一体型と、上下が分かれた上下分離型があります。日本で行われた複数の医療機関を対象とした調査[3]では、使用されていた口腔内装置のうち91.8%が上下一体型であり、上下分離型は7.9%でした。

一方、米国睡眠医学会などのガイドラインでは、成人の閉塞性睡眠時無呼吸に対して口腔内装置を用いる場合、既製タイプの装置よりも、歯型などに合わせて個別に作製され、下あごを前に出す量を調整できるカスタムメイドの装置が推奨されています[2]。

なお、日本では閉塞性睡眠時無呼吸に対する口腔内装置治療が保険適用となっています。厚生労働省の通知[4]では、睡眠時無呼吸症候群に対する口腔内装置は「上顎及び下顎に装着し1装置として使用するもの」とされています。また、保険診療でマウスピースを作製するためには、睡眠時無呼吸症候群の診断後に、医師から歯科へ診療情報が提供されることが必要とされています。

どの装置が適しているかは、費用だけでなく、睡眠時無呼吸症候群の重症度、歯や顎関節の状態、下あごの位置調整が必要かどうか、治療後の検査で十分に改善しているかなども含めて考える必要があります[2]。保険診療の対象となるかどうかや使用できる装置の種類については、主治医や歯科医師にご相談ください。

閉塞性睡眠時無呼吸の重症度分類

閉塞性睡眠時無呼吸の重症度は、無呼吸低呼吸指数(AHI)で評価されます。AHIは睡眠1時間あたりの無呼吸・低呼吸の回数を示す指標で、一般的に用いられる分類では、軽症(5〜15)、中等症(15〜30)、重症(30以上)に分けられます[5]。

どの程度の効果が期待できるのか

マウスピース治療により、

  • 無呼吸・低呼吸の改善
  • いびきの軽減
  • 日中の眠気の改善

が報告されています。

無呼吸や低呼吸が減ることで、睡眠が中断されにくくなり、日中の眠気の改善につながることが報告されています[1][2]。

日本の調査[3]では、閉塞性睡眠時無呼吸患者を対象に口腔内装置治療の効果が調べられました。その結果、AHIの平均値は22.4から9.3へ低下していました。また、AHIの低下率は平均52.0%で、治療後のAHIが5未満となった割合は35.6%でした。一方で、AHIの低下が50%未満にとどまった人も33.0%あり、すべての人で十分な改善が得られるわけではありません。

一方、海外の研究では、下あごを前に出す位置を後から調整できる装置と、あらかじめ決められた位置で固定する装置との比較も行われています。805人の閉塞性睡眠時無呼吸患者を対象に、固定式の装置と調整可能な装置を比較した研究[6]では、装置を使用する前の平均AHIは30.7でした(軽症34.1%、中等症29.2%、重症36.8%)。

この研究では、AHIが5未満まで改善した割合は、調整可能な装置で57.9%、固定式の装置で46.9%でした。さらに、AHIが10未満となり日中の眠気も改善した割合は、調整可能な装置で66.4%、固定式の装置で44.9%でした。また、年齢が若い人、BMIが低い人、睡眠時無呼吸の程度が比較的軽い人で、装置による改善が得られやすい傾向がみられました[6]。

このように、マウスピース治療では一定の改善が期待できますが、効果には個人差があります。そのため、作製後も症状の変化や検査結果を確認し、必要に応じて装置の調整や他の治療法を検討することが大切です。

日本の調査[3]では、口腔内装置治療後に再評価が行われた割合は54.3%でした。治療効果が十分に確認されないままになると、効果が不十分な場合でも、装置の調整やCPAPなど他の治療法を検討する機会を逃す可能性があります。そのため、マウスピースを作製して終わりではなく、治療後に効果を確認することも重要です。

どのような方に向いているのか

マウスピース治療は、次のような方に用いられることが多い治療法です[2]。

  • 軽症から中等症の閉塞性睡眠時無呼吸の方
  • いびきが目立つ方
  • CPAPが合わない、または継続が難しい方

また、装置が小さく電源を必要としないため、出張や旅行時にも使用しやすいという特徴があります。

注意点

マウスピース治療では、

  • 歯の痛みや違和感
  • 顎関節の不快感
  • かみ合わせの変化
  • 口の乾燥や唾液の増加

がみられることがあります[1]。

また、出張や旅行時など、状況によっては、CPAPとマウスピースを併用する場合もあります。

CPAPとの違い

CPAPはマスクから空気を送り込むことで気道を広げる治療であり、中等症から重症の方に広く用いられる代表的な治療法です[5]。一方、マウスピースは下あごの位置を調整することで気道を確保する治療です。装置が小さく、持ち運びしやすいという特徴があります。無呼吸・低呼吸の改善効果はCPAPの方が高いことが多いとされています[2]。

CPAPとマウスピース治療の違いを以下にまとめます。

まとめ

マウスピース治療は、閉塞性睡眠時無呼吸に対する治療の一つであり、軽症から中等症の方や、CPAPが合わない場合の一つの選択肢となります。

マウスピース治療には複数の種類があり、治療効果には個人差があります。装置の種類や保険診療の対象となるかどうかは、症状や重症度、歯や顎関節の状態などによって異なるため、医療機関で相談することが大切です。

参考文献

[1] Sutherland K et al. Oral Appliance Treatment for Obstructive Sleep Apnea: An Update. J Clin Sleep Med. 2014;10(2):215-227. PMID:24533007 PMCID:PMC3899326

[2] Ramar K et al. Clinical Practice Guideline for the Treatment of Obstructive Sleep Apnea and Snoring with Oral Appliance Therapy. J Clin Sleep Med. 2015;11(7):773-827. PMID:26094920 PMCID:PMC4481062

[3] Okuno K et al. Japanese Cross-Sectional Multicenter Survey (JAMS) of Oral Appliance Therapy in the Management of Obstructive Sleep Apnea. Int J Environ Res Public Health. 2019;16(18):3288. PMID:31500221 PMCID:PMC6765780

[4] 厚生労働省. 診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(通知). I017-1-2 睡眠時無呼吸症候群に対する口腔内装置.https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001293313.pdf

[5] 日本循環器学会ほか. 循環器領域における睡眠呼吸障害の診断・治療に関するガイドライン(2023年改訂版)

[6] Lettieri CJ et al. Comparison of Adjustable and Fixed Oral Appliances for the Treatment of Obstructive Sleep Apnea. J Clin Sleep Med. 2011;7(5):439-445. PMID:22003337 PMCID:PMC3190841