良い睡眠のために気をつけることを、これまでのコラムでも多くお伝えしてきました1。
例えば、朝日に当たること、寝る前のカフェインや飲酒は控えること、健康的な食事を摂り、運動をすることなどです。その他にも寝る部屋の気温2や季節3が睡眠に与える影響も紹介しました。
今回は、「寝る時の騒音が睡眠に与える影響」がテーマの論文をご紹介したいと思います。
この研究は、夜間に聞こえる騒音でどのくらい寝にくく感じるのか調べた世界各国からの論文36報の結果をまとめたものです(日本からの3研究を含む)4。騒音の種類は、以下の3つを検討しました。
研究では、夜間の騒音(飛行機・道路・鉄道)が10dB上がった時にどのくらい睡眠に影響を与えるのかを調べました。
参考までに、騒音調査小委員会の末岡らによる報告によると、日本国内の「騒音の目安」は以下のようになっています5。
Table 1. 夜間の騒音の目安
場所 | 音の大きさ(dB) |
---|---|
✈️飛行機離着陸の真下 | 110〜120 |
🚘️太い道路周辺(7車線以上) | 昼間72、夜間70 |
🚘️細い道路周辺(2車線以上) | 昼間68、夜間63 |
🚃鉄道周辺(平坦軌道) | 昼間65、夜間59 |
🚃鉄道周辺(掘割軌道※地下掘り下げ) | 昼間61、夜間62 |
私達の生活環境をとりまく一般的な音の目安は以下の通りです(騒音調査小委員会の報告に基づく)。
私達が眠る夜間の騒音は、戸建てで30dB後半、都会の高層住宅で40dB前半くらいです。
「睡眠障害の原因として飛行機・道路・鉄道からの騒音がありますか?」と質問した場合、以下のように、どの種類の騒音も睡眠障害との関連が見られました。
Table 2. 夜間の騒音と睡眠障害との関係
騒音の種類 | 睡眠障害との関連 |
---|---|
✈️飛行機からの夜間の騒音が10dB上がると | 2.8倍 (2.3–3.5) |
🚘️道路からの夜間の騒音が10dB上がると | 2.3倍 (1.9–2.8) |
🚃鉄道からの夜間の騒音が10dB上がると | 3.0倍 (2.4–3.8) |
次に、睡眠の問題を細かく尋ね、夜間の騒音(飛行機・道路・鉄道)との関連を検討しました。
すると、どの種類の騒音も「途中覚醒」「寝付きの悪さ」「睡眠障害」との関連が見られました。
Table 3. 夜間の騒音と途中覚醒・寝付きの悪さ・睡眠障害との関連
✈️飛行機からの夜間の騒音が10dB上がると | 🚘️道路からの夜間の騒音が10dB上がると | 🚃鉄道からの夜間の騒音が10dB上がると | |
---|---|---|---|
途中覚醒との関連 | 2.3倍 (1.9–2.9) | 1.8倍 (1.2–2.5) | 2.5倍 (1.5–4.3) |
寝付きの悪さとの関連 | 2.1倍 (1.9–2.3) | 2.3倍 (1.9–2.9) | 2.7倍 (2.1–3.4) |
睡眠障害との関連 | 2.3倍 (2.0–2.6) | 2.6倍 (2.3–2.9) | 3.0倍 (2.8–4.1) |
夜間の騒音の大きさと重度睡眠障害がある割合を比べると、夜間の騒音が大きければ大きいほど睡眠障害の確率が大きくなっていました。特に飛行機からの夜間の騒音は、その他の騒音と比べて、睡眠障害との関係が目立っていました。
また、最近の研究のみ(2015年以降)含めた結果では、全36研究(2000年以降)の結果と比べて、夜間の飛行機の騒音と睡眠障害の関係が、はっきりと出ていました。
上記研究でも示された通り、夜間の騒音が40dBを超えると、徐々に睡眠障害の有病率が高まることが示されています。実際に、欧州WHOのガイドラインや日本の睡眠ガイドは夜間の屋外騒音を40dB以下にすることを推奨しています67。屋外の騒音が気になる場合には、防音機能をもった窓や壁を設置して、騒音を遮蔽することも重要です。