睡眠検査では何を調べているのか~MSLT~

以前の記事で、1泊で行う睡眠検査、PSG検査について詳しく解説しました。

今回は、日中に行う睡眠検査、MSLT検査について解説します!

MSLT検査とは?

MSLT検査(Multiple Sleep Latency Test/反復睡眠潜時検査)は、日中の強い眠気の原因を調べるための検査です。
夜しっかり眠っているのに、昼間にどうしても眠くなる、そういった症状の裏に、ナルコレプシー特発性過眠症といった睡眠障害が隠れていることがあります。

MSLT検査では、日中に複数回短い睡眠(昼寝)をとってもらい、「どれくらい早く眠りに入るか」「レム睡眠にすぐ入るか」を測定します。
PSG検査(終夜睡眠ポリグラフ検査)とセットで行われることが多く、夜の睡眠と日中の眠気の両方を評価することで、より正確な診断につながります。

どんなときにMSLT検査を行うのか?

以下のような症状がある場合に、MSLT検査の実施を検討します。

  • 日中、強い眠気に襲われる
  • 授業中や会議中など、無意識に眠ってしまう

PSG検査では様々な疾患の可能性を踏まえて睡眠状態をくまなくチェックしますが、MSLT検査については主に日中の眠気の有無に焦点を当て、ナルコレプシーや特発性過眠症が疑われる場合に行われます。

「日中に眠い」という自覚があっても、眠気は本人の感覚だけでは正確に把握しにくいため、MSLT検査によって客観的に眠気の程度を評価します。

MSLT検査で何を調べるのか

この検査で主に評価するのは次の2点です

睡眠潜時(sleep latency):横になってから眠りにつくまでの時間

睡眠開始時レム睡眠(SOREM):入眠直後にレム睡眠に入る現象

通常、入眠すると浅いノンレム睡眠→深いノンレム睡眠→レム睡眠の順で睡眠状態が変化し、レム睡眠に入るまでには約90分かかります。しかし、ナルコレプシーの方では10〜15分程度、早い方だと眠りに落ちた瞬間にレム睡眠に入ることがあります。このように、眠ってから15分以内にレム睡眠が生じることを「SOREM(Sleep Onset REM period(入眠時レム睡眠期))」と呼びます。このようなレム睡眠の異常を検出するためにも、MSLTはとても重要な検査です。

検査時に装着するセンサーは以下の通りです

MSLT検査では基本的に、「眠れたかどうか」に着目するため、PSG検査と比べると必要なセンサーの数はかなり少なくなります。

検査の流れ

・前日〜当日朝
MSLT検査は、通常前夜にPSG検査を実施した翌日に行われます。
夜の睡眠状態を確認したうえで、日中の眠気を評価する必要があるからです。

・検査当日(午前〜午後)
朝に起床後、約2時間おきに計5回の「昼寝テスト」を行います。(検査の状況によっては、4回で終了となることもあります)

検査時間は、患者さんの睡眠状態によって変動しますが、1回につき20分~35分程度です。
ベッドに横になって昼寝をしてもらい、検査者がリアルタイムでどれくらい早く眠りに入るかを測定します。


検査と検査の間は、起きて過ごす必要があります。検査施設にもよりますが、カフェインを含む飲料の制限や、スマートフォンの操作や本を読むなどの行為も制限されることが多いです。これは、眠気を抑えてしまう刺激を避けるためです。

結果の解釈

MSLT検査を行うことで以下の結果が出ます。

・各セッションでの平均睡眠潜時(眠りに入るまでの時間)

・入眠後15分以内にレム睡眠に入るかどうか、入った回数(SOREMの有無、回数)

上記の結果をもとに、過眠症の有無、そして種類の判別が可能になります。

検査の結果、各セッションでの平均睡眠潜時が8分以下の場合は「過度の眠気あり」と判断されます。

さらに、SOREMが2回以上出現する場合はナルコレプシー、2回未満の場合は特発性過眠症と診断されます。

※ただし、前夜のPSG検査時にもSOREMが出現していた場合は1回とカウントできます

検査時の注意点

  • 化粧、整髪料、ネイルはPSG検査に続いてNG
  • アルコールやカフェインの摂取は前日から控える
  • 普段通りの睡眠スケジュールを保つ
  • 薬の服用が眠気に影響する場合、検査前に中止を指示されることがある

特に睡眠リズムを整えておくことはとても大切で、前夜のPSG検査での睡眠時間が極端に短い場合は、MSLT検査の結果は参考値として扱われてしまうこともあります。

まとめ

MSLT検査は、「寝ても寝ても眠い」原因を調べるための専門的な検査です。
夜の睡眠を調べるPSGと組み合わせることで、あなたの眠気の背景にある病気をより正確に見つけることができます。

当院ではこの検査設備はありませんが、この検査が可能な施設と連携しており、必要時に適宜医師から案内させて頂いております

睡眠時間をしっかり確保しているのに日中眠い、授業や仕事中に居眠りしてしまう、睡眠障害があると感じているが、原因がわからない、こうした悩みをお持ちなら、一度睡眠状態を詳しく検査してみるのが有用かもしれません。