「過眠症」という病気はありますが、この診断に至る前に考えておかないければいけない(除外・鑑別しないといけない)問題が複数あります。
まず一番大きいのは「眠りは足りているのだろうか?」ということ。
よく「8時間睡眠が良い」とか「6時間で良い」などという言説がありますが、これらはある意味で全て不正確で誤りです。なぜならば「必要睡眠時間には個人差が非常に強く、一律に何時間眠ればよいなどと規定できない」からです。
わかりやすいところでは、睡眠時間には遺伝性が存在します。遺伝率は加齢と共に低下するものの、様々な体質の中ではかなり強い方で、「身長が高い親からは高い子供が生まれやすい」のと同じかそれ以上に「睡眠時間が長い親からは睡眠時間が長い子供が生まれやすい」という特徴があります。
必要睡眠時間は年齢と共に短縮していきます。
あくまで平均ですが、20代で8~9時間、40代で7~8時間、60代で6時間程度となります。もしも「うちの親、もう60歳なのに8時間は眠っている…」という場合には、平均に比べるとその親御さんの睡眠時間は非常に長く(仮に睡眠時間偏差値というものを想定するなら70くらいです)、平均的な人より2時間程度長い睡眠時間を必要としていると考えられます。ということは、あなた自身も人より2時間程度長い睡眠時間が必要かもしれない、ということです。(たとえば30歳なら9時間程度など)
「睡眠負債」という有名な言葉があります。寝不足は少なくとも2週間程度は蓄積します。仮に毎日1時間ずつだけ睡眠不足を重ねただけでも、1~2週間経過すると、単純計算では14時間、一晩完全に徹夜をしたのと同程度以上の眠気が、昼間に続くことになります。
つまらない授業や会議だったら絶対に眠ります。電車でもウトウトします。場合によっては人と話している最中でも意識が遠のいてしまうかもしれません。気合があろうがなかろうが、睡眠不足では人は居眠りしてしまうのです。
そして睡眠負債の存在として特徴的な証拠に”over-slept”、目覚ましを特に使わない休日などに長い時間「寝溜め」をしてしまう、という現象が見られます。
「○時間寝ているから私は寝不足ではないはず」という自己判断は全く当てにならず、「昼間眠くて仕方がない」という場合には、まずは睡眠の絶対的な「量」、平日や休日の睡眠時間、そして場合によっては幼少期やご両親の睡眠時間をまずは評価していくことが必要になります。