近年、睡眠時間の違いが、ダイエット中の“体重減少の中身”に影響する可能性が報告されています。
アメリカで行われた研究では、同じカロリー制限を行っていても、睡眠時間が短い条件では、脂肪の減少が少なく、筋肉などの除脂肪体重がより多く減っていたことが示されました。
本記事では、この研究結果をもとに、睡眠不足がダイエット中の脂肪・筋肉の減り方にどのように関係する可能性があるのかを、一般の方にも分かりやすく解説します。
ダイエットの成果は、体重計の数字だけで判断されがちです。
しかし、体重が減っていても、その内訳が脂肪なのか、筋肉などの除脂肪体重なのかによって、体への影響は大きく異なります。
脂肪が減ることは生活習慣病リスクの低下につながる可能性がありますが、筋肉が過度に減ると、基礎代謝の低下や体力低下につながるおそれも指摘されています。
米国で行われた研究では、過体重の成人10名を対象に、同じカロリー制限を行いながら、
をそれぞれ14日間ずつ実施し、体重や体組成の変化を詳しく調べました[1]。
その結果、体重の減少量自体は、睡眠時間の長短で大きな差はありませんでした。
しかし、体重の内訳をみると違いがみられました。
参加者は、同じ食事内容・摂取カロリーのもとで、睡眠時間のみを変えて2週間ずつ過ごしました。
体重、体脂肪量、筋肉などの除脂肪体重、ホルモン変化などが測定されています。

[1]より引用。日本語の注釈は筆者が挿入したもの。
体重減少量は両条件でほぼ同じでしたが、睡眠時間が短い条件では、脂肪の減少量が少なく、除脂肪体重の減少が多いことが示されています。
具体的には、
という傾向がみられました[1]。
この結果から、睡眠不足の状態では、体重は減っても脂肪が減りにくい可能性が示唆されています。
この研究では、体組成の変化だけでなく、代謝やホルモンの変化も調べられています。
呼吸商(RQ)は、体が脂肪と糖のどちらを主にエネルギーとして使っているかを示す指標です。
値が高いほど、脂肪より糖の利用割合が高いことを意味します。
睡眠時間が短い条件では、このRQが高く、脂肪がエネルギーとして使われにくい状態であったことが示されました[1]。
また、睡眠不足の条件では、
といった変化もみられています。
これらの変化は、体がエネルギーを効率よく温存しようとする反応の一部と考えられており、結果として脂肪が残りやすく、筋肉が分解されやすい状態につながった可能性があります。
睡眠不足の条件では、ダイエット中にもかかわらず主観的な空腹感が強くなったことが報告されています[1]。
これは、食事量を抑えるダイエットを続けるうえで、継続の難しさに影響する可能性があります。
一方で、脂肪細胞から分泌されるレプチン(食欲を抑えるホルモン)については、体重減少に伴う低下はみられたものの、睡眠時間による明確な差は確認されませんでした。
この点からも、睡眠とホルモンの関係は複数の要因が関与していると考えられます。
この研究は、睡眠不足がダイエット中の体組成に影響する可能性を示した点で重要ですが、日常生活で同じ結果が必ず起こると断定することはできません。
ただし、「体重だけを見てダイエットを評価するのは不十分かもしれない」という視点や、睡眠時間も生活習慣の一部として考える重要性を示唆する結果といえます。
ダイエット中に睡眠不足が続いている場合、「体重は減っているのに思ったように体脂肪が減らない」と感じる背景の一つとして、こうした体の反応が関係している可能性も考えられます。
睡眠に関してご不安な点があれば、ぜひ当院までご相談ください。
[1] Nedeltcheva AV, Kilkus JM, Imperial J, Schoeller DA, Penev PD. Insufficient sleep undermines dietary efforts to reduce adiposity. Ann Intern Med. 2010 Oct 5;153(7):435-41. doi: 10.7326/0003-4819-153-7-201010050-00006. PMID: 20921542; PMCID: PMC2951287.