寝る前に曲が頭から離れない?頭の中で曲が繰り返される「イヤーワーム」と睡眠の質を調べた研究

「布団に入ったのに、お気に入りの曲が頭の中で何度も流れて眠れない」

このような経験をしたことはないでしょうか。実際には音楽が鳴っていないにもかかわらず、曲やメロディーが意図せず頭の中で繰り返される現象は、「イヤーワーム」と呼ばれています。

寝る前に音楽を聴くと、気持ちが落ち着き、眠りやすくなると感じる方も少なくありません。一方で、親しみのある曲が頭から離れなくなり、かえって寝つきにくくなることも考えられます。

本記事では、イヤーワームとはどのような現象なのか、寝る前の音楽と睡眠にはどのような関係が示されたのかを、研究結果に沿って分かりやすく解説します。

頭の中で曲が繰り返される「イヤーワーム」とは

イヤーワームとは、自分から思い出そうとしていないのに、曲やメロディーが頭の中に浮かび、繰り返される現象です。

実際に耳から音が聞こえているわけではなく、音楽に関する記憶が意図せず再生されている状態です。曲全体ではなく、サビや短いフレーズだけが何度も繰り返される場合もあります。

イヤーワームは、好きな曲が浮かび、楽しい気分になることもあります。しかし、眠ろうとしているときに曲が繰り返されると、「止めたいのに止められない」「音楽に意識が向いて眠れない」と感じてしまうこともあります。

今回の論文では、特に次の3つのタイミングで起こるイヤーワームを「睡眠に関連するイヤーワーム」として調べています[1]。

  • 眠りにつこうとしているとき
  • 夜中に目が覚めたとき
  • 朝、目が覚めたとき

つまり、寝る前だけでなく、いったん眠った後に目を覚ました際に曲が浮かぶ現象も研究対象に含まれていました。

夜のイヤーワームが多い人ほど睡眠の質が低い?

最初の研究では、米国に住む成人199人を対象に、音楽を聴く習慣、イヤーワームの頻度、睡眠の状態について質問紙調査が行われました。参加者の平均年齢は35.9歳でした[1]。

睡眠については、主に次の指標が使われています。

  • PSQI:主観的な睡眠の質、寝つくまでの時間、睡眠時間、睡眠効率、睡眠中の問題、日中の支障などを評価する指標
  • SSS:その時点での日中の眠気や覚醒度を評価する指標
  • FIRST:ストレスがかかったときに不眠が起こりやすいかを評価する指標

調査では、参加者の約87%が「音楽は睡眠をよくする、または少なくとも睡眠を妨げない」と考えていました。その一方で、音楽を頻繁に聴いたり、日常的に音楽へ深く関わったりしている人ほど、睡眠に関連するイヤーワームの頻度が高いという関連がみられました[1]。

また、参加者の約77%が、週1回以上の頻度でイヤーワームを経験していました。そのうち、眠りにつくときや夜中・朝に目覚めたときなど、睡眠に関係する時間帯にイヤーワームを頻繁に経験していた人は、全体の約33%でした。

夜間のイヤーワームが多い人では、次のような傾向が確認されています[1]。

  • 主観的な睡眠の質が低い
  • 日中の眠気が強い
  • ストレスを受けた際に不眠が起こりやすい
  • 夜間の睡眠中に問題を感じることが多い
  • 睡眠の問題による日中の支障が大きい

PSQIによって「睡眠の質が低い」と判定された人の割合は、睡眠に関連するイヤーワームが多いグループで約78%でした。これに対し、イヤーワームが主に日中だけに起こるグループでは約52%、イヤーワームがほとんどないグループでは約40%でした。

図1:睡眠に関連するイヤーワームと睡眠状態の関係

寝る前の音楽と睡眠を睡眠検査で調べた実験

続く実験では、健康な若年成人が睡眠検査室に宿泊し、寝る前に音楽を聴いた後の睡眠が詳しく調べられました。

参加者は当初50人でしたが、すべての手続きを完了した48人が解析対象となりました。平均年齢は21.2歳で、不眠症、睡眠時無呼吸症候群、ナルコレプシーなどの睡眠障害と診断された人や、睡眠に影響する薬を使用している人は対象から除かれています[1]。

実験では、参加者が無作為に次の2つの条件へ分けられました。

  • 歌詞のあるポップソングを聴く条件
  • 同じ曲から歌詞を除いたインスト版を聴く条件

使用されたのは、次の3曲です。

  • Journey「Don’t Stop Believin’」
  • Carly Rae Jepsen「Call Me Maybe」
  • Taylor Swift「Shake It Off」

いずれも、参加者にとって比較的なじみがあり、頭に残りやすいと考えられたポップソングです。音楽は睡眠検査室で午後10時から、静かな音量にあたる42デシベルで流されました。その後、午後10時30分ごろに消灯し、翌朝までポリソムノグラフィーによる睡眠検査が行われました[1]。

ポリソムノグラフィーとは、脳波、眼球運動、筋肉の動き、呼吸などを記録し、睡眠の段階や睡眠中の状態を調べる検査です。自己申告だけでなく、実際の睡眠を客観的に測定できる点が、この実験の大きな特徴です。

まず、音楽を聴いた直後には、どちらの条件でも参加者のストレス感や緊張感が低下し、リラックス感が高くなっていました。少なくとも、音楽を聴いている時点では、歌詞の有無にかかわらず気分が落ち着く方向の変化がみられたことになります[1]。

一方、その後の睡眠には条件による違いがありました。

歌詞ありの曲を聴いた条件と比べて、インスト版を聴いた条件では、睡眠効率が低く、寝つくまでの時間が長い結果となりました[1]。

睡眠効率とは、寝床にいた時間のうち、実際に眠っていた時間の割合です。たとえば、寝床に8時間いても、眠れずに起きている時間が長ければ、睡眠効率は低くなります。

意外に思われるかもしれませんが、「歌詞のない音楽だから睡眠を妨げにくい」とは限らない可能性が示されたのです。

イヤーワームが起きた夜は眠りが浅くなる?

研究者らは、音楽の条件だけでなく、実際に睡眠に関連するイヤーワームを経験した人と、経験しなかった人の睡眠も比較しました。

その結果、イヤーワームを経験した人では、次のような違いが確認されました[1]。

  • 睡眠効率が低い
  • 寝つくまでの時間が長い
  • 夜中に目を覚ました回数が多い
  • 浅い睡眠であるN1睡眠の割合が多い
  • 深い睡眠であるN3睡眠の割合が少ない

N1睡眠は、覚醒状態から睡眠へ移る初期の浅い睡眠で、N3睡眠は深い睡眠に相当します。

この結果からは、睡眠に関連するイヤーワームがあった人では、眠りが途切れやすく、睡眠が浅い方向へ偏っていたことが分かります。

一方、総睡眠時間には明確な差がありませんでした。

つまり、この研究では、睡眠時間が同程度でも、寝つき、途中の覚醒、睡眠の深さといった、睡眠の連続性や構成に違いがみられたということが示されました。

眠っている間も脳は曲を処理している?

研究ではさらに、睡眠検査で記録された脳波を詳しく解析し、イヤーワームを経験した人と、経験しなかった人の脳活動を比較しました。

睡眠に関連するイヤーワームを報告した人では、深い睡眠中に、前頭部の「徐波活動」が大きくなっていました。また、左側頭部でも徐波活動の増加がみられました[1]。

徐波活動は、深い睡眠に関連するゆっくりとした脳波活動です。左側頭部には、音の処理に関わる領域があります。研究者らは、日中に聴いた音楽の記憶が睡眠中に自発的に再活性化され、それが夜間のイヤーワームにつながった可能性を指摘しています。

実際、研究では参加者の約4分の1が、夜中または朝に目覚めたときにイヤーワームを経験していました。音楽を聴いてから数時間が経過し、周囲で音楽が流れていないにもかかわらず、曲が頭に浮かんでいたことになります。寝る前に音楽を聴いてリラックスできても、曲が頭に残るタイプの人では、音楽を止めた後も脳の処理が続き、睡眠を妨げる可能性があるのです。

図2:睡眠に関連するイヤーワームと徐波活動

寝る前の音楽はやめたほうがよいのか

今回の研究結果だけを理由に、すべての人が寝る前の音楽をやめる必要はありません。

音楽を聴いた直後には、参加者のストレス感や緊張感が低下し、リラックス感が高くなっていました。音楽が気分を落ち着かせる可能性まで否定されたわけではありません。

また、研究で使われたのは、若年成人になじみのある、頭に残りやすい3曲のポップソングです。結果を、高齢者、睡眠障害のある人、静かなクラシック音楽、環境音、自然音、睡眠用に作られた音楽などへ、そのまま当てはめることはできません。

一方で、布団に入った後も同じ曲が繰り返し浮かんだり、曲を止めてもメロディーが頭から離れないというような経験が続いている場合は、就寝前の音楽が本当に自分の睡眠に合っているかを見直す余地があります。

まずは、就寝直前に頭に残りやすい曲を避ける、寝床の外で音楽を止めるなど、自分の睡眠とイヤーワームの関係を観察することが現実的です。

大切なのは、「音楽は睡眠によいはず」と決めつけないことです。聴いている間にリラックスできていても、曲が頭の中に残ることで、その後の睡眠には別の影響が現れる可能性があるのです。

まとめ

イヤーワームとは、意図していないのに曲やメロディーが頭の中で繰り返される現象です。

今回の研究では、睡眠に関連するイヤーワームが多い人ほど、主観的な睡眠の質や日中の状態が悪い傾向にありました。また、睡眠検査室で夜間のイヤーワームを経験した人では、寝つくまでの時間が長く、夜中の覚醒が多く、深い睡眠が少ない傾向が示されました。

さらに、イヤーワームを経験した人では、睡眠中の前頭部や左側頭部で徐波活動が大きくなっており、眠った後も音楽の記憶に関する処理が続いていた可能性が判明しました。

実際に私たちの睡眠を考えるうえでは、寝る前の音楽と自分の睡眠との相性を確認することが重要です。

寝つきにくさや夜中の覚醒が長期間続き、日中の生活にも支障が出ている場合は、音楽だけが原因と考えず、当院など、睡眠専門の医療機関へ相談することもご検討ください。

参考文献

[1]Scullin MK, Gao C, Fillmore P. Bedtime Music, Involuntary Musical Imagery, and Sleep. Psychol Sci. 2021 Jul;32(7):985-997. doi: 10.1177/0956797621989724. Epub 2021 Jun 9. PMID: 34105416; PMCID: PMC8641138.