朝早く目が覚めてしまい、その後なかなか眠れない。こうした「早朝覚醒」は、不眠症状のひとつです。寝つきが悪いわけではないため、「眠りには入れるのに、なぜ予定より早く目が覚めてしまうのか」と悩む方も少なくありません。
早朝覚醒の背景には、睡眠そのものの浅さだけでなく、体温やメラトニン分泌などのリズムを調節する「体内時計」が通常より早い時間帯にずれている可能性も研究されています。
本記事では、早朝覚醒のある人に夜の明るい光を浴びてもらった研究をもとに、早朝覚醒と体内時計の関係、そして夜の光を使った研究から分かることを、一般の方にも分かりやすく解説します。
不眠症状には、寝つきにくさ、夜間の覚醒、予定より早く目が覚めること、睡眠による休養感の低下など、いくつかの現れ方があります。今回の研究が対象にしたのは、その中でも「寝つきは比較的よい一方で、朝早く目が覚めてしまう」早朝覚醒タイプの人たちです。早朝覚醒では、その後もう一度眠ろうとしても眠れず、日中の眠気、疲労感、集中しにくさ、気分の落ち込みなどを自覚することがあります。
今回紹介する研究でも、対象者はかなり典型的な早朝覚醒型の不眠に絞られていました。参加条件には、平均の消灯時刻が23時より前であること、寝つくまでの時間が15分未満であること、入眠後6時間以内かつおおむね朝5時前に自然に最終覚醒すること、総睡眠時間が6時間未満であること、日中の疲労感やいらだちがあることなどが含まれていました[1]。
私たちの睡眠は、単に「疲れたら眠る」という仕組みだけで決まっているわけではありません。体の中には、眠りやすい時間帯と覚醒しやすい時間帯をつくる体内時計があります。
早朝覚醒型不眠の一部では、この体内時計が通常より早い時間帯にずれている可能性があります。たとえば、本来ならまだ眠っていたい深夜や明け方の時間帯に、体内時計の上では覚醒へ向かうタイミングに入っていると、予定より早く目が覚めやすくなる可能性があります。今回の研究は、その前倒しになった可能性のある体内時計を、夜の明るい光で後ろへ動かせるかを調べたものです。
光は体内時計に強く関わる刺激です。一般的には、朝の光は体内時計を整えるうえで重要とされます。一方で、夜間の強い光は、寝つきを妨げたり、睡眠リズムを乱したりする可能性があるため、就寝前には明るすぎる環境を避けるよう説明されることが多いです。この研究では「夜の明るい光」が使われました。一体なぜなのでしょうか。
理由は、早朝覚醒型不眠の一部では、体内時計が前倒しになっている可能性があるからです。もし体内時計が早い時間帯にずれているのであれば、夜の特定の時間帯に光を浴びることで、そのリズムを後ろにずらせる可能性があります。つまり、この研究は「体内時計が前倒しになっている可能性がある早朝覚醒型不眠に対して、夜の光でリズムを後ろへ動かせるか」を調べた研究です。
研究には、早朝覚醒型不眠が少なくとも6か月続いている成人が参加しました[1]。寝つきは短く、前半の睡眠は比較的保たれている一方で、入眠から6時間以内、概ね朝5時前に自然に目が覚めてしまい、総睡眠時間が6時間未満になる人を対象にしています。参加者は平均51.2歳(36〜68歳)の成人24人でした。最終的に、明るい白色光を浴びる群13名と、暗い赤色光を浴びる対照群11名が解析されています。また、睡眠薬を使用している人や、閉塞性睡眠時無呼吸、むずむず脚症候群、周期性四肢運動が疑われる人は対象から除外されています。
明るい白色光は2,500ルクスで、1晩目は20時から24時まで、2晩目は21時から翌1時まで、各4時間実施されました。参加者は光源から約70cmの距離を保ち、研究者が視線や距離を確認する管理下で光を浴びました。対照群では、体内時計を後ろにずらす作用が少ないと考えられる、100ルクス未満の暗い赤色光が使われました。
研究では、光を浴びる前後に体温リズムを測定するとともに、尿検査からメラトニン分泌のリズムを評価しました。また、睡眠については、睡眠日誌と手首につける活動量計が使われました。睡眠日誌では、消灯時刻、寝つくまでの時間、夜間の覚醒、最終覚醒時刻などが記録されました。活動量計では、手首の動きから睡眠中の覚醒や総睡眠時間が推定されています。さらに、眠気、いらだち、抑うつ感などの日中症状も調べられました。
このように、この研究では体温、メラトニン、睡眠日誌、活動量計、日中症状を組み合わせて、体内時計と睡眠の変化を多面的に評価しています。
研究の主要な結果として、明るい白色光を浴びた群では、体温リズムとメラトニンリズムが後ろにずれる変化がみられました[1]。
体温リズムでは、明るい光群の体温最低時刻が、光曝露前の平均2時03分から、光曝露後には平均4時27分へと後ろにずれていました。一方、暗い赤色光の対照群では、光曝露前の平均1時25分から、光曝露後の平均1時13分であり、同じような後退はみられていません[1]。
メラトニンリズムについても、明るい光群ではメラトニン分泌の開始時刻が後ろにずれる結果が示されています[1]。
図1:夜の明るい光によるメラトニンリズムの変化

体内時計の変化に加えて、睡眠指標にもいくつかの変化がみられました。
睡眠日誌では、明るい光群の入眠後覚醒時間、つまり眠った後に起きていた時間が、光曝露前の平均80.19分から、1週後には45.10分、4週後には20.94分へと減少していました[1]。暗い光群でも一定の減少はみられましたが、活動量計のデータでは、明るい光群でよりはっきりした変化が示されています。
最終覚醒時刻についても変化がみられました。睡眠日誌では、明るい光群の最終覚醒時刻は光曝露前の平均5時30分から、1週後には6時19分、4週後には6時27分へと遅くなっていました。ただし、対照群と比べて一貫して明確な差が示されたわけではなく、より遅く目覚める傾向があったと考えることができます[1]。
また、総睡眠時間については、睡眠日誌で明るい光群が光曝露前の平均320.1分から、1週後に358.6分、4週後に411.8分へと増加していました。一方、暗い光群では343.2分から366.5分、4週後に366.3分でした[1]。4週後には、明るい光群の方が暗い光群より長い睡眠時間を示していました。
表1 光曝露による睡眠指標の変化

この研究から分かることを整理すると、早朝覚醒型不眠の一部では、体内時計が前倒しになっている可能性があり、研究条件下では夜の明るい光によって体温リズムやメラトニンリズムが後ろにずれることが示されました。また、睡眠日誌や活動量計でみた睡眠指標にも改善方向の変化がみられました[1]。
しかし、ここで注意したいのは、「夜に明るい光を浴びると不眠に良い」と誤解しないことです。早朝覚醒が続く場合は、まず睡眠時間、就寝・起床時刻、日中の眠気、飲酒、カフェイン、服薬状況、気分の状態、いびきや無呼吸の有無などを総合的に確認することが重要です。そのうえで、必要に応じて睡眠専門外来で相談し、自分の早朝覚醒がどのような背景で起きているのかを評価していくことが望まれます。
早朝に目が覚める不眠は、「眠りが浅い」「年齢のせい」と片づけられがちです。しかし、今回の研究は、そこに体内時計のタイミングという別の視点があることを示しています。寝つきは悪くないのに朝早く目が覚めてしまう方では、単に睡眠時間を増やそうとするだけでなく、睡眠と体内時計のリズムが合っているかを考えることが、症状を理解する手がかりになるかもしれません。
参考文献
[1]Lack L, Wright H, Kemp K, Gibbon S. The treatment of early-morning awakening insomnia with 2 evenings of bright light. Sleep. 2005 May;28(5):616-23. doi: 10.1093/sleep/28.5.616. PMID: 16171276.