睡眠時無呼吸症候群にはいくつかのタイプがありますが、その多くは、睡眠中に気道が狭くなることで呼吸が妨げられる「閉塞性睡眠時無呼吸症候群(以下、睡眠時無呼吸)」と呼ばれるタイプです。いびきや日中の眠気などが代表的な症状として知られています(こちらでもご紹介しています)。

睡眠時無呼吸になりやすい要因としては、肥満がよく知られていますが、やせていても睡眠時無呼吸を発症することがあります。発症の有無は体格だけに左右されるわけではなく、さまざまな要因が関与するとされています。
では、体格以外にどのような要因が関係しているのでしょうか。今回のコラムでは、要因の一つである気道の構造や、それを支える筋肉のはたらきに注目してご説明します。
アジア人における睡眠時無呼吸の特徴については、アジア人を対象とした研究で報告されています[1]。この研究では、睡眠時無呼吸のあるアジア人は欧米人と比べて体格指数(BMI)が低い傾向にあること、また肥満の割合が比較的少ないにもかかわらず、有病率は欧米人と同程度であることが示されています。
このような背景から、睡眠時無呼吸の発症には肥満以外の要因も関与していると考えられています。
睡眠時無呼吸は、睡眠中に空気の通り道(上気道)が狭くなったり、ふさがったりすることで起こります。肥満は代表的な要因ですが、それ以外にも加齢、骨格、筋肉の働きなど、さまざまな要因が関係しています。こうした要因について、もう少し具体的にみていきましょう。
加齢に伴い、気道を広げる筋肉の働きが低下することで、気道が閉じやすくなることが知られています。さらに、睡眠中はもともと気道を広げる筋肉の働きが低下するため、加齢によって気道を支える機能が弱くなると、気道の閉塞が起こりやすくなると考えられています。体脂肪が多くない場合でも、加齢は睡眠時無呼吸が起こりやすくなる重要な要因の一つと考えられています[2,3]。
肥満になると脂肪が気道の周りにもつくため、空気の通り道が狭まり、睡眠中に呼吸が妨げられやすくなります。しかし、気道が狭まる原因は、必ずしも脂肪が多いことだけに限りません。たとえば、もともとの気道の広さや、顎や顔の骨格といった構造の違いによって、気道が狭くなることもあります。
体脂肪が多くなくても睡眠時無呼吸がみられる人では、どのような特徴がみられるのでしょうか。
・顎の前後の大きさ(奥行き)が小さく、のどの奥の空間が狭い
・舌が大きく、気道をふさぎやすい位置にある
・軟口蓋(のどの奥にあるやわらかい部分)が大きい
などの特徴が報告されています。このような特徴がある場合には、体脂肪が多くなくても、気道の閉塞が起こりやすくなります[4]。
さらに、気道は硬い骨で固定されている構造ではありません。そのため、一時的に狭くなったり、閉じたりすることがあります。このように変形できる性質は、しゃべったり飲み込んだりする際に必要なものです。気道は周囲の筋肉によって開いた状態に保たれており、これらの筋肉は気道が閉じないように支える働きをしています。しかし、睡眠中はその働きが低下するため、もともと気道が狭い場合には、閉塞が起こりやすくなります[2,5]。
このように、睡眠時無呼吸は肥満だけでなく、気道の構造と筋肉の働きといった複数の要素が組み合わさることで、生じることがあると考えられています。
睡眠時無呼吸は、呼吸が弱くなる状態(低呼吸)や一時的に止まる状態(無呼吸)が繰り返されることで生じます。以下に、その基本的な流れを図で示します。

このような流れが繰り返されることで、睡眠が途切れやすくなり、日中の眠気などの症状につながると考えられます。

睡眠時無呼吸は肥満気味の人がなりやすい病気ですが、やせている人でもみられることがあります。一般的に「太っていないから大丈夫」と思われやすく、やせ型の人では見逃してしまうことがあるかもしれないため、注意が必要です。
睡眠時無呼吸の症状には、主に次のようなものがあります[3]。
・大きないびきをかく
・睡眠中に呼吸が止まる(無呼吸)と指摘される
・息苦しさや窒息感で目が覚める
・日中に強い眠気がある
・起床時に頭痛がする
・熟睡感がない
このような症状に心当たりがあったり、自覚がなくてもご家族から指摘されたりする場合は、受診を考える必要があると言えるでしょう。「肥満ではないから大丈夫」と考えず、気になる症状がある場合は、当院へ一度ご相談ください。
参考文献
[1] Lam B et al. Obstructive sleep apnoea in Asia. Respirology. 2007;12(1):2-11. PMID:17217123
[2] Eckert DJ. Pathophysiology of adult obstructive sleep apnea. Proc Am Thorac Soc. 2008;5(2):144-153. PMID:18250206; PMCID:PMC2628457
[3] Jordan AS, et al. Adult obstructive sleep apnoea. Lancet. 2013;383(9918):736–747. PMID:23910433 ; PMCID:PMC3909558
[4] Sakakibara H et al. Cephalometric abnormalities in non-obese and obese patients with obstructive sleep apnoea. Eur Respir J. 1999;13(2):403-410. PMID:10065689
[5] Sutherland K et al. Obesity and craniofacial structure as risk factors for obstructive sleep apnoea: impact of ethnicity. Respirology. 2012;17(2):213-222. PMID:21992683