寝室の空気が悪いと眠りが浅くなる!?二酸化炭素濃度と睡眠の質を調べた研究

寝室の温度、枕、マットレス、照明には気を使っていても、「寝室の空気」まで意識している方は少ないかもしれません。

しかし、窓やドアを閉め切って眠ると、寝室の換気が不十分になり、二酸化炭素(CO₂)濃度が高くなることがあります。では、こうした寝室の空気環境は、睡眠の質や翌日の眠気に関係するのでしょうか。

今回紹介する研究では、学生寮の個室を対象に、寝室の換気状態を変えたときのCO₂濃度、睡眠の状態、翌日の眠気や集中力が調べられました。この記事では、寝室の空気と睡眠の関係について、研究内容を解説します。

寝室の空気はなぜ悪くなりやすいのか

寝室は、家の中でも長い時間を過ごす場所です。睡眠時間が7〜8時間であれば、一晩の約3分の1を寝室で過ごしていることになります。

一方で、寝室は換気が不足しやすい空間でもあります。寒い季節には窓を閉め、暑い季節にはエアコンを効かせるために窓を閉める方が多いでしょう。さらに、音や光を避けるためにドアを閉めて寝ることもあります。

このような状態では、外から新しい空気が入りにくくなります。人は眠っている間も呼吸を続けているため、閉め切った寝室ではCO₂濃度が上がりやすくなるのです。

二酸化炭素濃度に注目した実験

この研究では、デンマーク工科大学の学生寮に住む学生を対象に、2つの実験が行われました[1]。

1つ目の実験では、窓を閉めた条件と、窓を少し開けた条件が比較されました。解析に使われたのは14人分のデータです。窓を閉めた条件では、睡眠中の平均CO₂濃度は2585 ppmでした。一方、窓を開けた条件では平均660 ppmまで下がっていました。

2つ目の実験では、窓は閉めたまま、CO₂濃度が約900 ppmを超えると作動する換気ファンを使いました。こちらは16人が参加し、換気なし条件と換気あり条件が比較されました。換気なしでは平均CO₂濃度が2395 ppm、換気ありでは835 ppmでした。

参加者は腕時計型のアクチグラフを装着し、睡眠中の体の動きから睡眠状態が評価されました。また、起床後にはオンライン質問票で、睡眠の感じ方、翌日の眠気、集中しやすさなども回答しています。

図1 換気による二酸化炭素濃度の違い

「眠りが浅い」とは何を見ているのか

日常会話で「眠りが浅い」と言うとき、その意味は人によって少しずつ違います。

「なかなか寝つけない」「夜中に何度も目が覚める」「寝たはずなのに熟睡感がない」「朝起きてもすっきりしない」

こうした感覚がまとめて「眠りが浅い」と表現されることがあります。

今回の研究では、睡眠の状態をいくつかの指標で評価しています。たとえば、入眠潜時は「寝つくまでにかかった時間」、睡眠効率は「寝床にいた時間のうち、実際に眠っていた割合」を意味します。

1つ目の実験では、窓を開けた条件の方が、アクチグラフで評価した入眠潜時が有意に短くなっていました。つまり、この研究条件では、CO₂濃度が低い条件の方が、参加者はより早く眠りについたと考えられます。

2つ目の実験では、換気ファンが作動していた条件で、睡眠効率が有意に良好でした。睡眠効率が高いということは、中途覚醒などの眠っていない時間が少なく、良好な睡眠が取れていたという意味です。

また、睡眠の主観的評価でも、2つの実験を合わせてみると、寝室の空気の質がよい条件で睡眠の質がよい方向に変化したと報告されています。

翌日の眠気や集中力にも関係する可能性

睡眠の影響は、夜だけで終わるものではありません。眠りが浅かったり、十分に休めていなかったりすると、翌朝に眠気が残る、頭がぼんやりする、集中しにくいと感じることがあります。

今回の研究でも、寝室の空気環境が翌日の状態に関係するかどうかが調べられました。

1つ目の実験では、窓を開けた条件の方が、参加者全体として「寝室の空気が新鮮だった」「寝つきやすかった」と評価する傾向がみられました。また、翌朝の眠気も少ない方向の結果が示されています。

2つ目の実験では、換気ファンが作動していた条件の方が、参加者全体として「寝室の空気が新鮮だった」「より休めた」と評価していました。また、全体的な体調感もよい方向に変化していました[1]。

さらに、2つの実験結果を合わせて解析すると、寝室の空気の質がよい条件では、翌日の眠気が少なく、集中しやすい方向の結果が示されました。

研究では、翌日の頭の働きをみるテストも行われています。具体的には、文章の意味をすばやく判断する「論理的に考える力」をみる課題です。

このテストでは、2つの実験結果を合わせて解析すると、換気のよい条件で成績がよい方向に出たと報告されています。

表2 換気条件の違いによるテスト成績の差

寝室の換気で気をつけたいこと

この研究から、寝室の空気環境は睡眠に関係する可能性があると考えられます。とはいえ、実生活で「とにかく窓を開けて寝ればよい」と考えるのも危険です。

たとえば、交通量の多い道路沿いでは、窓を開けることで音が気になり、かえって眠りが妨げられることがあるほか、花粉、黄砂、PM2.5、外気のにおいなどが気になる地域では、外気をそのまま入れることが不快につながる場合もあります。防犯上、窓を開けたまま眠るのが難しい住宅もあるでしょう。

このため、換気だけでなく、温度や湿度、外気環境、騒音なども含めて総合的に考える必要があります。

現実的には、次のような工夫が考えられます。

・就寝前に短時間換気して、寝室の空気を入れ替えておく

・可能であれば、24時間換気や換気口を適切に使う

・エアコン使用時も、換気が完全に止まっていないか確認する

・外の音や花粉が気になる場合は、窓開け以外の換気方法を検討する

・乾燥が気になる場合は、室温や湿度も合わせて確認する

ただし、これらは一般的な睡眠環境を整えるための工夫であり、不眠症や睡眠時無呼吸症候群などの治療そのものではありません。寝つけない、夜中に何度も起きる、朝早く目が覚める、日中の眠気が強いといった症状が続く場合には、寝室環境だけで説明できない睡眠障害が隠れていることもあります。その場合は、生活環境の見直しだけで済ませず、睡眠専門の医療機関で相談することが大切です。

睡眠に関してお困りのことがあればぜひ当院までご相談ください。


参考文献

[1]Strøm-Tejsen P, Zukowska D, Wargocki P, Wyon DP. The effects of bedroom air quality on sleep and next-day performance. Indoor Air. 2016 Oct;26(5):679-86. doi: 10.1111/ina.12254. Epub 2015 Nov 5. PMID: 26452168.